【病気】爬虫類の偽痛風(ハイドロキシアパタイト沈着症)

発生・原因

偽痛風は軟骨石灰化症とも呼ばれ、臨床的に痛風に類似するカルシウム代謝障害で、関節にカルシウム結晶が沈着する疾患です。人の偽痛風は、ピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)の関節沈着を伴うため、爬虫類でもヒトの命名法に合わせてハイドロキシアパタイト沈着症という用語を使用することが提案されています〔Wenker et al.2001〕。カメでの報告が多く〔Burns et al. 2013,Chambers et al.2009、Graham et al.2021〕、トカゲではまれです〔Jones et al.2009〕。痛風と同時に発生することもありますが、偽痛風は内臓が侵されないことが多いため、他の種類の転移性石灰化とは区別できます。本来の石灰化とは、不溶性の無機ミネラルの沈着を指す用語であり、ジストロフィー性、転移性、特発性、または医原性に分類されることが多く〔Hargis et al.2017〕、ほとんどの種において、関与するミネラルの性質は、リン酸または炭酸塩と対になったカルシウムです〔Hargis et al.2017〕。この疾患の原因は不明ですが、栄養不足、外傷、腎不全、副甲状腺機能亢進症、ビタミンD過剰症、その他の組織または骨の感染などと関連付けられていますが、これまでの報告にも、基礎疾患の証拠は関連付けられていません〔Graham et al.2021〕。

症状

四肢の関節炎による腫脹と機能喪失で、痛風の症状に類似しています。全身の関節に発生する可能性があり、関節面だけでなく、関節包、関節周囲筋膜および筋組織内に、潰瘍を伴わない黄色から白色の半硬結の腫瘤も形成されて腫大します〔 Graham et al.2021〕。

診断

病理組織学的検査において、関節軟骨にピロリン酸カルシウムの沈着および関節周囲の肉芽腫が確認されます〔Chambers et al.2009〕。X線検査では骨増殖が診断されます。

治療

原因が不明なために明確な治療法はありません。病変の退縮は報告されていないため、病変の炎症を緩和するための、抗生物質や抗炎症剤の投与を行います。 

参考文献

  •  Burns RE,Bicknese EJ,Westropp JL,Shiraki R,Stalis IH.Tumoral calcinosis form of hydroxyapatite deposition disease in related red-bellied short-necked turtles, Emydura subglosoba.Vet Path50(3):443-450.2013
  • Chambers JK,Suzuki T,Une Y.Tophaceous Pseudogout of the Femorotibial Joint in a Painted Turtle (Chrysemys picta).J Vet Med Sci71(5):693-5.2009
  • Graham EA, Burns RE,Ossiboff RJ.Depositional diseases.In Noninfectious Diseases and Pathology of Reptiles:Color Atlas and Text.Vol 2.2nd ed.Garner MM,Jacobson ER ed.CRC Press.Boca Raton,FL:109-114.2021
  • Hargis AM, Myers S.The Integument. In: James F. Zachary’s Pathologic Basis of Veterinary Disease.6th ed.Elsevier.St Louis,MO:1030.2017
  • Jones YL,Fitzgerald SD.Articular gout and suspected pseudogout in a Basilisk lizard (Basilicus plumifrons).J Zoo Wildl Med40(3):576-578.2009
  • Wenker C et al.Pseudogout or hydroxyapatite deposition disease in two red-bellied short-necked turtles (Emydura albertisii).Der Praktische Tierarzt 82(2):94-97.2001

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。