解剖
フェレットは完全な肉食動物であり、そのような餌に適応する歯と顎の構造を持っています。乳歯の歯式は2(dI 3–4/3: dC 1/1: dM 3/3)で計28~30本あり、 永久歯の歯数式は 2(I3/3: C1/1: P3/3: M1/2)で計34本あります。乳歯は全て3ヵ月齢までに生え、9ヵ月齢までに永久歯に生えかわります〔Johnson-Delaney 2008,2016〕。多くの肉食哺乳類に見られる大きく先の尖った裂肉歯を持ち、硬い肉の剪断、骨の粉砕に用いられるます。裂肉歯を上顎第4前臼歯と下顎の第1後臼歯で、左右に上下1対ずつの計4本が存在し、上下の裂肉歯の遊離縁に認められる錐状の突起は非常によくかみ合い、肉を切り裂くのに適した構造になっています。 顎は短く、下顎の関節顆は横方向の関節窩に収まっています。これには、強い噛み合わせのために大きく口を開けたときに脱臼を防ぐ関節後突起があります〔Johnson-Delaney 2008〕。
疾患
フェレットの歯のトラブルは一般的で、歯石、歯肉炎、歯の欠損、歯の破損、歯周病、根尖周囲膿瘍などがあります〔Johnson-Delaney 2008〕。
歯の破折
餌や玩具による摩耗、金属ケージの網をかむことで特に上顎の犬歯が折れることが多いです〔Nemec et al.2016,Eroshin et al.2011〕。犬歯の破折は単にエナメル質が破折して短くなっていることもあるが、露髄することで炎症性歯根吸収や歯根膜腔の拡大などの変性を伴うこともあり、歯髄炎を起こします。


歯髄炎は歯の変色を起こし、失活します。

根尖塔周囲膿瘍に進展する可能性があり、患歯の近くの頬が膨らみます。歯髄炎を疑う症例では抜歯が推奨されますが、しかし、上顎犬歯の抜歯後に上唇が下顎犬歯に巻き込まれることがあります〔Primožič et al.2021〕。


欠歯と過剰歯
先天的に下顎第二大臼歯が欠損している場合があり、他の肉食動物と同様に、第二大臼歯は進化の過程で失われるか、痕跡化するのではないかという推測があります。また、上顎第一切歯と第二切歯の間に最もよく見られる過剰歯がある場合もあります〔Johnson-Delaney 2008,2016、Nemec et al.2016〕。
不正咬合
下顎犬歯の片方または両方が異常に前方に変位することが多く、上唇の炎症や下顎の歯肉の乾燥することがあります〔Johnson-Delaney 2008〕。
口蓋裂
フェレットでは先天性の口蓋および唇の奇形が見られ、上唇の領域が開いており、口蓋が裂けています。裂け目に食物が入り込むことで二次的な炎症や膿瘍が発生することがあります。重度の口蓋裂は授乳を困難にします〔Johnson-Delaney 2016〕。
歯周病
健康な口には歯肉炎はありませんが、フェレットが1歳以上になると少量の歯垢が付きます。加齢的に歯石の量が増えて歯肉炎が起こると、歯茎が腫れてきます。初期では痛みもなく、無症状ですが、炎症が広がると出血も見られ、歯を支える歯槽骨が溶け始めたりします。正常な歯肉溝の深さは 0.5 mm未満ですが〔Eroshin et al.2011〕、進行すると深くなってきます。歯槽骨の破壊も進むと歯が動揺したり、抜け落ちます。歯周病は食生活が原因で、フェレットは餌を少量ずつ一日に何度も分けて食べます。夜中に起きて食べることもあるため、口の中は常に食べ物が付着した状態が続くため、歯石がつきやすいのです。幼体時はペレットはふやかして与えますが、大人のフェレットにも柔らかい餌や半生フードを与えていると歯石がつきやすくなり、歯肉炎が起こります。動揺歯では抜歯が必要となります。


検査
フェレットの大半は、検査のために開口ができます。綿棒を使用して唇を持ち上げ、歯と歯肉を検査できます。

X線検査で歯根部を含めた評価を行いますが、詳細はCT検査になります。

予防
定期的な歯石のスケーリングや自宅での歯磨きを奨励する必要があります〔Johnson-Delaney 2008〕。ふやかしの餌やおやつを中止することも重要です。餌を犬猫用の特別な歯磨き粉は、フェレットに使用しても安全であるようです。
餌をドライフードにする
ふやかしたペレットでなく、乾燥した固い状態で与えた方が、歯についた歯石を落とす効果があります。
甘いおやつはやめる
おやつなど糖分を多く含んでいるため、歯のエナメル質を溶かし、虫歯になります。
歯磨きをする
歯磨きは簡単に汚れを取り除くだけでも効果がありますので、幼体時から歯みがきを習慣化させるとよいです。歯磨きは、爪切りや耳掃除と同じように、フェレットが動かないようにしっかりと固定しなければならず、歯も小さいため歯の表面を専用ブラシで擦ることは、正直難しいです。
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歯が小さいので、歯磨きすると歯茎から出血が見られることもありますので注意して下さい。もし歯ブラシがなければ指にガーゼを巻いて、歯の表面を擦るだけでもよいです。犬歯と手前の臼歯くらいしか磨けないと思います。
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歯磨きは1~2日に1回、1週間に1回などできる範囲で無理しないで下さい。実際にはフェレットは暴れて抵抗し、上手く歯磨できないことがほとんどです。無理に行わないようにしましょう。
歯石スケーリング
フェレットの吐く息が臭くなってきたり、歯の表面に歯石が多くつきはじめたら、動物病院で、歯石を除去してもらって下さい。基本的には麻酔下で行いますので、獣医師とよく相談して下さい。

デンタルグッズ
おもちゃを噛むことにより、自然に歯磨き効果があるものや、飲水に混ぜるだけの歯石をとる商品があります。虫歯予防や歯石の沈着予防に効果的な歯磨きに代わりになります。
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まとめ
フェレットにとって歯のケアーはストレスにならないように、一番いい方法を選択しましょう。歯磨きよりもデンタルサプリメントをエサにかけて与えることしか出来ないフェレットが多いのが現実です。
参考文献
- Eroshin VV et al.Oral examination results in rescued ferrets: clinical findings.J Vet Dent28(1):8-15.2011
- Johnson-Delaney CA.Topics in medicine and surgeryDiagnosis and Treatment of Dental Disease in Ferrets.Journal of Exotic Pet Medicine17(2):132‐137.2008
- Johnson-Delaney CA.Anatomy and Disorders of the Oral Cavity of Ferrets and Other Exotic Companion Carnivores.Veterinary Clinics of North America: Exotic Animal Practice19(3):901‐928.2016
- Nemec A,Zadravec M,Račnik J.Oral and dental diseases in a population of domestic ferrets (Mustela putorius furo).J Small Anim Pract57(10):553-560.2016
- Primožič PK et al.Follow Up on Simple (Closed) Extraction of Fractured Maxillary Canine Teeth in Domestic Ferrets (Mustela putorius furo).Front Vet Sciy13:8:677680.2021