フトアゴヒゲトカゲにおいて、皮膚の腫瘍(新生物)は比較的遭遇頻度の高い疾患の一つです。これらは良性のものから悪性のものまで多岐にわたります。
疫学と発生傾向
爬虫類全般において、皮膚は腫瘍の発生頻度が高い部位です。大規模な回顧的研究によると、フトアゴヒゲトカゲを含むトカゲ類の腫瘍のうち、皮膚および皮下組織由来のものが最も一般的であると報告されています〔Hannon et al.2011〕。特にフトアゴヒゲトカゲは、他のトカゲ種と比較しても腫瘍の発生報告が多く、加齢とともにリスクが増加する傾向にあります。
代表的な皮膚腫瘍の種類
フトアゴヒゲトカゲで見られる主要な皮膚腫瘍は以下の通りです。
扁平上皮癌
爬虫類で最も一般的に見られる悪性上皮性腫瘍の一つです。皮膚のどの部位にも発生する可能性がありますが、頭部や眼窩周囲、四肢などに好発します。局所浸潤性が非常に強く、皮膚だけでなく下の筋肉や骨にまで達することがあります。遠隔転移の可能性もありますが、まずは局所での破壊的な増殖が臨床上の問題となります〔Mauldin et al,2006〕。痂皮を伴う潰瘍状の病変や、カリフラワー状の増殖を示すことが多いです。


色素細胞腫
爬虫類特有の色素細胞(黒色素胞、虹色素胞、黄色素胞など)から発生する腫瘍です。 黒色素胞由来では悪性度が高い場合があります。虹色素胞腫 はフトアゴヒゲトカゲでの報告があります。白色〜真珠のような光沢を持つ結節として現れることがあります。悪性度: 色素細胞腫は良性の場合もありますが、悪性の挙動(転移など)を示すことも多く、注意が必要です。Heckersら (2012) の研究では、爬虫類の色素細胞腫の多くが悪性である可能性が示唆されています。
線維肉腫
皮下組織の線維芽細胞由来の悪性腫瘍です。固い結節として触知され、急速に増大することがあります。周囲組織への浸潤性が高いのが特徴です。
神経線維腫・神経鞘腫
末梢神経の鞘から発生する腫瘍で、皮膚や皮下に結節を作ります。フトアゴヒゲトカゲでは多発性の神経線維腫が見られることがあり、これは遺伝的な要因が疑われるケースもあります〔Agnew et al.2018〕。
検査・診断
肉眼的な所見だけでは確定診断は不可能で、生検・病理組織学的検査で病理検査を行い、良性・悪性の判定、マージン(取り切れているか)の評価が可能になります〔Garnett et al.2004〕
治療と予後
外科的切除が 最も第一選択となる治療法です。悪性腫瘍の場合、再発を防ぐために正常な組織を含めて広範囲に切除(サージカルマージン確保)する必要があります。四肢に発生した場合は断脚が必要になることもあります。放射線治療や化学療法は、犬猫に比べて爬虫類でのプロトコルが確立されていませんが、一部の専門施設では試みられることがあります。
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参考文献
- Agnew D et al.Nonsalient Diseases of Reptiles.In Pathology of Wildlife and Zoo Animals.Terio KA, McAloose D, St. Leger J eds. Academic Press.2018
- Garnett NL et al.Tumors in Reptiles.In Infectious Diseases and Pathology of Reptiles.Jacobson ER ed.CRC Press.2004
- Hannon DE et al.Retrospective study of neoplasms in six species of lizards.Journal of Herpetological Medicine and Surgery, 21(1).2011
- Heckers KO et al.Chromatophoromas in reptiles.Journal of Herpetological Medicine and Surgery22(1-2).2012
- Mauldin GN,Done LB.Oncology.In Reptile Medicine and Surgery.2nd ed.Mader DR ed.Saunders Elsevier.2006
- Paré J A et al.Pathogenicity of the Chrysosporium anamorph of Nannizziopsis vriesii for veiled chameleons (Chamaeleo calyptratus). Medical Mycology44.2006
