【治療】リスの投薬方法

投薬成功のためのハンドリング

リス科動物は非常に繊細で、捕獲や不慣れな保定が大きなストレスとなり、呼吸抑制や虚脱状態に陥ることがあります 。このような状態は命にかかわるため、投薬の成功は、単に薬を飲ませる技術だけでなく、動物のストレスを最小限に抑え、安全を確保するハンドリングにかかっていると言えます。保定は静かに、優しく、そして迅速に行うことが肝要です 。  

強制経口投与

これは、動物を保定して直接口の中に薬を投与する方法です。正確な量の投与が可能ですが、動物へのストレスが最も大きくなります。シリンジ(注射器の針なし)やスポイトを使用します。動物を優しくタオルで包み、頭を固定します。シリンジの先端を口の横の隙間から差し込み、ゆっくりと薬を注入します。一気に注入すると誤嚥の危険があるため、少量ずつ時間をかけて行います。日頃から口元を優しく触る練習 や、爪切りをするかのように手足を優しく揉む練習を行っておくと、投薬時のストレスを軽減できます。慣れているリスであれば、片手で腹を支え、もう一方の手で背中を優しく押さえて保定する方法が有効です。馴れていないリスや警戒心が強いリスには、厚手の革手袋や金属メッシュの手袋を使用し、咬傷から身を守ることが重要です 。また、目の細かい玉網や洗濯ネットを使用すると、動物の逃走を防ぎ、保定のリスクを減らすことができます 。この際、リスの尾を掴むと、尾の鞘が剥がれてしまう危険があるため、絶対に避けるべきです 。

混合投与

薬を動物の好む食べ物や飲み物に混ぜて与える方法です。動物へのストレスは少ないですが、薬を全量摂取したか確認することが困難です。粉末や液体を混ぜる餌はリンゴジュース、ヨーグルト、ゼリー、ベビーフード、バナナ、ピーナッツバターなど、嗜好性が高く、薬の味を隠せるものが推奨されます。薬を混ぜる食品の量は少量に留め、確実に完食させることが重要です。薬によっては、特定の食品(例:乳製品)と混ぜると薬効が変化する可能性があります。

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飲水投与

飲み水に薬を混ぜるのも一方法ですが、餌に混ぜるのと同じで味次第で飲んでくれません。

水分がとれる野菜などを与えずに、水分は飲み水だけにしてください。しかし、頑固なシマリスは全く水を飲まなくなるのが欠点になります。部屋を暖かくすると喉が渇いて、薬を混ぜた水を飲んでくれるようになることもあります。

投薬時のリスの咬傷

リスの咬傷は、単なる怪我として軽視すべきではありません。リスに咬まれることで、狂犬病や鼠咬症などの人獣共通感染症に感染するリスクがあります 。鼠咬症の原因菌であるモニリホルムレンサ桿菌や鼠咬症スピリルムは、げっ歯類の口腔内に常在しており、咬傷から人間に感染することがあります。 このため、投薬時のハンドリングは、動物の安全だけでなく、投薬者自身の健康を守るためにも極めて重要です。咬傷を防ぐための適切な保定器具(手袋、ネットなど)の使用が推奨されます。

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。