要約
チンチラの瞳孔は、通常は縦長のスリット状ですが、目の色、特にアルビノなどの色素が薄い個体では、その形状が円形に近くなることが観察されています。これは、瞳孔の開閉を担う虹彩の筋肉の構造や色素の量が関係していると考えられています。

通常の瞳孔(スリット状)
ブラックやダーク系の瞳を持つチンチラの瞳孔は、明るい場所では細い縦長のスリット状になります。これは、ネコのように、網膜に入る光の量を効率的に調節するための形状です。光の少ない夜間や暗い場所では、このスリットが大きく開いて円形に近くなり、より多くの光を取り込みます。この縦スリットの瞳孔は、夜行性や薄明薄暮性の動物によく見られる特徴です。研究によれば、縦スリットの瞳孔は、異なる距離にある物体に同時にピントを合わせる「多焦点眼」としての機能や、獲物や捕食者を効果的に見つけるための垂直方向の動きの検知に有利である可能性が示唆されています〔Banks et al.2015〕。

色素が薄い目の瞳孔(円形に近い)
ピンクアイやルビーアイと呼ばれる、色素が薄い瞳を持つチンチラ(例:ピンクホワイト、ベージュ系)では、瞳孔が完全なスリット状にならず、円形に近いことがよくあります〔Walls et ak.1963〕。これは、瞳孔の形を作る「虹彩」の色素が欠乏しているためです。虹彩には、瞳孔を収縮させる「瞳孔括約筋」と、瞳孔を散大させる「瞳孔散大筋」があります。アルビニズム(先天性色素欠乏症)の動物では、虹彩の組織が薄く、色素細胞が少ないため、光が虹彩を透過しやすくなります。また、虹彩の筋肉自体の発達が不十分な場合があり、瞳孔をしっかりとスリット状に収縮させることが難しくなると考えられています。アルビノの動物の眼に関する包括的な研究では、メラニン色素が眼の正常な発達に重要な役割を果たしており、その欠如が視神経の経路異常や虹彩の低形成などを引き起こすことが知られています〔Montoliu et al.2014〕。

形状だけでなく機能もおかしい
薬剤(トロピカミド 1%,フェニレフリン 10%)による散瞳の反応は毛色によって異なり、褐色では散瞳するが色素の薄い虹彩では十分に散瞳しません〔Lima et al.2010〕。
参考文献
- Banks MS,Sprague WW,Schmoll J,Parnell JA,Love GD.Why do animal eyes have pupils of different shapes?.Science Advances1(7):e1500391.2015
- Montoliu L et al.Increasing the complexity: new genes and new types of albinism. Pigment Cell & Melanoma Research27(1):11-18.2014
- Walls GL.The Vertebrate Eye and Its Adaptive Radiation:p.652.Hafner Publishing.1963
- Lima L,Montiani-Ferreira F,Tramontin M et al.The chinchilla eye:morphologic observations,echobiometric findings and reference values for selected ophthalmic diagnostic tests.Vet Ophthalmol13.Suppl:14-25.2010
瞳孔の形状は、 濃い褐色の虹彩では縦長のスリット状ですが、縮瞳時はさらに細くなり、ほぼ完全 に閉鎖できます。野生のチンチラはアンデス山脈の標高が高い地域に棲息しているため、日中の強い紫外線から眼を保護するためと言われています。
ブドウ目や赤目では
ブドウ色や赤色の虹彩をもつチンチラの瞳孔はスリットが鈍く、縮瞳すると小さい楕円形を呈します。ブドウ 色や赤色の虹彩を異常と判断するべきか、品 種特異的な正常所見であるのかは分かっていませ