ウサギは切歯も臼歯も伸び続ける常生歯です。伸びすぎたり、異常な方向に伸びることで、採食困難あるいは口腔内を傷つけたりします。この病態を不正咬合と呼びます。ウサギの歯科疾患は、臨床現場で遭遇する最も一般的な疾患の一つでもあり、統計によれば、専門病院を受診するウサギの10~40%が何らかの歯科疾患を抱えており、飼い主が健康であると認識している個体であっても、詳細な検査を行うと高い割合で異常が発見されます〔Böhmer et al.2009,Böhmer et al.2017〕。
長繊維質(牧草など)の不足による咀嚼時間の短縮と歯冠摩耗の不十分さが最も大きな発生要因とされています。ペレット中心の餌は、咀嚼回数が少なく、歯にかかる垂直方向の負荷が不足するため、歯冠が過長します。対向する歯からの圧力が失われると、歯の成長速度は一時的に2倍にまで跳ね上がることが知られています。また、牧草に含まれるケイ酸塩などの研磨成分が不足することも、生理的な摩耗を妨げる決定的な要因となります〔Palma-Medel et al.2023〕。
老化/骨粗鬆症
加齢や不適切な餌とともにウサギの骨が薄くなり、歯を支えている歯槽骨も脆弱化し、歯が動揺して不正咬合が起こったり、抜けてしまうこともあり、後天性歯科疾患の進行性症候群(PSADD:Progressive Syndrome of Acquired Dental Disease) と呼ばれています。加齢に伴う累積的な摩耗不足や代謝変化が発症に関与しています。また、複数の研究でオスの方がメスよりも発症リスクが高い傾向が報告されています〔Palma-Medel et al.2023〕。PSADDになると歯の頂点を支えている歯槽骨が弱くなると、歯根が過長します。歯槽骨の脆弱化により、咬耗時に発生する力に応じて歯が変位したり、歯根膜の隙間が拡大します。そのために咬耗時に発生する力に応じて歯が変位し、歯根膜の隙間がさらに拡大します。歯の萌出が変位して不正咬合が起こるのはもちろんですが、歯根膜の隙間に細菌が入り込んで膿瘍にも発展したり(根尖周囲膿瘍)、歯根の細胞が死滅することで歯の成長が停止します。死活歯は侵食、破折、吸収が起こります。〔Harcourt-Brown 2010〕。
近年の形態計測学的研究により、すべての個体にこの基準線が等しく適用できるわけではないことが明らかになっています。頭蓋底と口蓋骨がなす角度(口蓋角)が 18.8度を超える個体(特に一部の短頭種など)では、咬合基準線が実際の生理的咬合面と一致しなくなる可能性があり、注意が必要です。これらの基準線は飼育ウサギ(ペットウサギ)向けに設計されており、野生のウサギには適合しないことが報告されています〔Böhmer et al.2020〕。
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