げっ歯類の膣栓

膣の蓋

膣栓 (Vaginal plug)とは、マウスやラット、ハムスター、モルモット、チンチラ、デクーなどのげっ歯類にみられる、交尾後にメスの膣内に栓のようにはまり込む蛋白質でできた分泌腺の塊です。膣栓はオスの精嚢腺と呼ばれる副生殖腺からの分泌物で、同じく副生殖腺である凝固腺からの分泌物が混ざって硬くなり、淡黄色ないし褐色をしています。

膣栓

役割

本来の膣栓の役割は、交尾を行い精子が逆流しないようにして、受胎効果を高めます 〔藤原ら 1989〕。交尾の確認は、メスの膣に膣栓がはまっているかで判断できますので、交尾栓(Copulation plug)とも呼ばれています。膣栓の大きさと膣に残る時間は幅があり、マウスでは米粒大で、10~24時間膣に残ります 〔田嶋 1991〕。メスに他のオスが交尾をしても精子の侵入を妨害できる役目もすると言われています。

オスのげっ歯類を飼っていると、この膣栓がケージの床に落ちていることがあります。マスターベーションをしていると考えれます。モルモットやチンチラでは早い時期に膣から外れ、観察しにくいという理由もあり、多くは交尾の判定にはならないともいわれています。

参考文献

  • 田嶋嘉雄.実験動物学.朝倉書店.東京.1991
  • 藤原公策,宮嶌宏彰,澤崎坦,前島一淑,森脇和郎,横山昭.実験動物学事典.朝倉書店.東京.1989

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。