◎爬虫類の紫外線ライトの選び方とお薦め商品

爬虫類への紫外線

昼行性の爬虫類は日光浴を行うことで身体の調整が行われます。保温効果と骨・甲羅の硬質化という重要な役割を太陽光は担い、飼育する際には、保温のためのバスキングライト、骨や甲羅の形成のための紫外線(Ultra violet:UV)ライトが必要になります。紫外線は太陽光の正常な成分で、波長によってさらに分けられ、自然光は短波長の UV-B (290~320 nm) と長波長の UV-A (320~400 nm) で構成されます。 350nm付近のUV-Aは多くの爬虫類や両生類の可視範囲内にあり、同種の生物や食物の認識に利用されているため〔Honkavaara et al. 2002〕、スペクトル内でのUV-Aの供給は極めて重要です。短波長のUV-B(290~315nm)は、皮膚中のステロールである7-デヒドロコレステロール(7DHC)をプレビタミンD3に変換し、骨・甲羅の硬質化に役立ちます。

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ただし、夜行性のヤモリやヘビ、多くの両生類では体内でビタミンD3を紫外線無しで合成できますので、基本的にはライトは不要と言われています。しかし、野生でも僅かな紫外線照射を受けていることから、僅かな紫外線が必要であるという考えもあります〔Honkavaara et al.2002〕。

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紫外線ライト

爬虫類向けの紫外線ライトは一般的な蛍光灯とは異なり、紫外線を照射することのできるランプを使用しています。ランプによって作り出される勾配や光源の適合性は、すなわち光の質(スペクトル)と量(動物が受ける放射照度)によって決まります。理想的なスペクトル分布の雛形は太陽スペクトルであり、生命は太陽スペクトルの下で進化し、地球上のすべての生命はこれに適応しています。したがって、ランプのスペクトルと太陽スペクトルを直接比較する必要があります。爬虫類に必要な紫外線を照射できるライトは装は、灯蛍光タイプとソケットタイプがあります。紫外線の量に関しては、ライトから任意の距離における放射照度は、ライトの出力と光の分布、つまりビームの形状に依存します。

2つのライトのタイプ

爬虫類用の紫外線ライトは、チューブ型タイプとスパイラル型の2つのタイプがあります。

チューブ型(直管型)タイプ

従来からは細長い直管のpチューブ型が主に使用され、ライトスタンドに取り付けて使用されてきました。水槽の上に乗せて使用し、全体にUV-Bが照射されるようにします。

スタンドライトと水槽は決まったサイズの商品になります。購入前に水槽のサイズを確認しなければなりません。

紫外線ライト

水槽以外にも飼育用のケージの天井の蓋に載せても使用され、水槽やケージ全体に紫外線を照射できるのが特徴です。ケージ内のかなりの部分に対してうっすらと紫外線が照射させる時に都合がよいです。

紫外線ライト

スパイラル型タイプ

蛍光管を折り曲げてコンパクトにしたスパイラル型とかボール型と呼ばれることもあります。基本的な特徴はUVB蛍光灯と同じですが、スパイラル型のタイプは、電球ソケットに取り付けて、万力式やクリップ式のソケットで水槽やケージに設置し、照射角度や距離の自由度が増え、強い紫外線を日光浴をするようにスポット的に照射するのに適しています。

紫外線ライト

小型のケージや水槽以外の自作のケージに取り付けられることが特徴です。しかし、照射範囲の強度が限定的になってしまうので、紫外線の勾配を設けることが難しいかもしれません。

紫外線ライト

しかしUVB蛍光灯と比べると劣化しやすく、半年程度で交換する必要があります。

使い方

紫外線ライトは保温効果はないので火傷の恐れはありません。一般的に紫外線ライトはバスキングライトと併用して、朝から夕方まで点灯するようにします。可視光も出ていますので、夜間は消灯します。そして紫外線ライトは設置する条件と寿命がありますので注意して下さい。寿命の多くは約1年になりますので、例えライトが明るくても交換をするべきです。

シェルターやタイマー

紫外線が極端に強すぎても悪影響を及ぼしますので、爬虫類が生息している場所を考えて距離を調節したり、タイマーと連動させて照射時間を調整しないといけませんません。また、爬虫類が自ら移動できて、暗い場所に移動できるようにシェルターも用意しましょう。

ガラス超しはダメ

紫外線の特徴として、物に反射したり、吸収もされやすく、窓ガラスで96%以上吸収されてしまいますので、効果が減退します。紫観賞魚のように水槽のガラス蓋の上にライトを乗せても意味がありません。直接光があたるように設置して下さい。

ライトだけ頼らない

「紫外線もどのくらいの強度のUV-Bをどのくらいの距離で、何時間あてればよいのか?」という明確な指標はありません。紫外線ライトは、あくまでも補助的なライトで、太陽光に勝るものはないです。夏や秋など温度が維持できる時期には、直射日光浴や甲羅干しもさせてあげましょう。窓際にケージや水槽を置いて浴びさせても、紫外線はガラスによって吸収されるので、その時は網戸にして下さい。

太陽光

ライトの交換は最低1年毎

紫外線ライトは、時間の経過とともにUV-Bの発生量が落ちてくるため、半年~1年程度で交換する必要があります。可視光は普通に放射されていても、UV-Bは出ていない可能性があります。

選び方

ライトのタイプ

爬虫類用の紫外線ライトは、蛍光灯タイプとソケットタイプの2つがありますので、ケージのタイプや生体の大きさなどで好きな方をお選びください。

ワット数

蛍光灯タイプは、「15型 (15W)」「20型 (20W)」「30型 (30W)」「32型 (32W)」「40型 (40W)」などの規格に分かれ、取り付けるスタンドライトと使用する水槽のサイズも、それに応じて設計されています。使用する水槽に応じて、紫外線ライトのワット数は決まります。基本的には15Wが45cm水槽用、20Wが60cm水槽用、30Wと32Wが90cm水槽用になります。ソケットタイプも様々なワット数の製品があり、幅45〜60cmのケージには13W、幅60~90cmのケージには26Wが目安になります。

UV-Bは何%

爬虫類用ライトは、UV-Bの強さが「2.0」「5.0」「10.0」のように数字で表記され、光の中でのUV-Bが占める割合を%で表したものです。数値が大きいほど、紫外線が強いと思って下さい。爬虫類の生態を考えると、砂漠と熱帯雨林では紫外線の強さは異なりますので、各爬虫類に生息地に適したライトを選ぶ必要があります。アガマやリクガメなど砂漠やサバンナのような特に紫外線の強い乾燥地帯に住んでいるものは強いものを、昼行性ヤモリや水ガメには中程度のものを、熱帯雨林の森や林床などあまり日の当たらない場所に住んでいるものには弱い紫外線ライトを使用します。ただし、同じ爬虫類であっても、季節や成長期などで通常以上に紫外線が必要なこともありますので、どのライトを使ったらよいのか一定の基準が決められないのです。

紫外線ライト

ファンガーソンゾーンによる紫外線選び

ファーガソン氏による野生の生体の種類ごとに、日光浴の習性や被爆した紫外線の強さを元に4つのゾーンに分類し、飼育個体の紫外線ライト選びおよび調整の目安となるガイトラインです。しかしこれはあくまでも目安なので全てを過信できません。ファンガーソンゾーンは紫外線量を定量的に測定されていますが、紫外線は量だけでなく、質(スペクトル)も大きくかかわってきます。また調査した個体数も少ないため、今後の研究に期待したいとことです。

爬虫類・両生類のファンガーソンゾーン

UV測定器

爬虫類飼育には可視光・赤外線・紫外線が必須です。可視光は目で見れば明るい、暗い、色温度がある程度把握できますし、赤外線は温度計で測定できますが、一般的に紫外線は目視できずに、測定も簡単にはいきません。紫外線量の測定はファンガーソンゾーンで示されていますが、特にUVBを測定することが重要なのかもしれません。多くの製品が効果ですが、紫外線測定ならびにUVB測定のい簡易な製品も多数流通しており、紫外線ライトの劣化の判断くらいは可能ですので、一つ揃えておいてもよいでしょう。

紫外線ライトの副作用

紫外線ライトは紫外線だけでなく可視光も発しますが、青系の光が中心でその強度も弱いため、十分な可視光を放射することはできません。基本的には一般的な可視光主体のライトや、保温用の白熱電球と組み合わせて使用することになります。そして、紫外線には明るさが足りない欠点もあり、強い紫外線ライトほど明るさは落ちます。暗く見えるために瞳孔が開き、水晶体や網膜が紫外線の影響を受けることが懸念されています。高強度または不適切な波長の紫外線への曝露は、爬虫類に重大な罹患さらには死亡率と関連している報告も増えており、ボールニシキヘビとアオタントカゲでは、活動性と食欲の低下、脱皮不全、潰瘍性角膜炎と結膜炎(ニシキヘビ)、体重減少(トカゲ)などが見られました。ライトの照明を改善することで、臨床症状は軽減または解消されました〔Gardiner et al.2009〕。つまり、仮にUV-Bのみを強く出す紫外線ライトだとしても、色が自然光とは異なることで爬虫類に悪影響を及ぼします。個体により紫外線ライトが強い場合もあり、シェルターや樹木など退避できる場所も設けましょう。

2灯式の取り付け器具を使い、1本は可視光ライトを設置するべきで、またソケットタイプの可視光ライトを別に設置することが推奨されています。近年の爬虫類用紫外線ライトは色も自然の光と近くしており、UV-Aの光もしっかりと含まれたライトもあります。

可視光ライト

一般的な蛍光灯は主に可視光を供給するので、可視光線ライトに分類できます。可視光ランプの理想はフルスペクトルライトと呼ばれている太陽光に近い光を放射する製品になります。商品によってはスペクトルを紹介している可視光ランプもあるので、それを参考にして選ぶと良いでしょう。しかし、紫外線ライトや白熱電球でも可視光は出していますが、その光は青や赤に偏っているため、可視光ライトを補助的に使用して、最終的に全てのライトを使用して太陽光に近づけているかが問題になるため、とても難しいのが現実です。したがって、結論的には自然の太陽光を少しの時間で日光浴をさせることが理想になるのです。

お薦めUVBライト

熱帯・亜熱帯に棲息している爬虫類、砂漠やサバンナに棲息している爬虫類によって紫外線ライトの強さを使い分けると選択が容易だと思います。そして、可視光の色のバランスが悪いこともあり、ライトによっては可視光ライトも併用して照射することを推奨します。また熱帯・亜熱帯に棲息する爬虫類では紫外線が強いとされている下記のHIDランプの使用が薦められています。

種類紫外線ライト可視光ライト
熱帯・亜熱帯に棲息する爬虫類
ヒルヤモリ、グリーンイグアナ、パンサーカメレオン、ウォータードラゴン、ファイヤースキンク、ホシガメ、アカアシガメ、水ガメ全般など
レプタイルUVB100 26W ナチュラルライト 13W
漠やサバンナに棲息する爬虫類
フトアゴヒゲトカゲ、アオジタトカゲ、エボシカメレオン、トゲオアガマ、オニプレートトカゲ、サバンナモニター、ミズオオトカゲ、テグー、ヘルマンリクガメ、ギリシャリクガメ、ロシアリクガメ、パンケーキリクガメ、ヒョウモンリクガメ、ケヅメリクガメなど
レプタイルUVB150 26W ナチュラルライト 13W
表:お薦め紫外線ライトの組み合わせ

レプタイルUVBライト

レプタイルUVB100 26W
熱帯・亜熱帯棲息爬虫類用UVライト
レプタイルUVB15026W
砂漠やサバンナ棲息爬虫類用UVライト

ナチュラルライト 13W

自然な発色!可視光ライトね

UVライトとナチュラルライトを一緒に照射できるライトスタンド

こだわって!ここまできたら専用の物使おうよ!

HIDランプ

HIDランプは、高輝度放電灯(High Intensity Discharge Lamp)の略称で、メタルハライドランプ、バラストレス水銀灯などが爬虫類の飼育で使用されています。これらHIDランプは可視光・紫外線・赤外線の全てを放射するため、「可視光線ライト」であり「紫外線ライト」であり、「保温ライト」でもありますので、ライトを複数使用するのが面倒な場合には都合がよいです。一般的な蛍光灯の紫外線ライトよりも光が強く、高効率で、寿命が長く、太陽光と色温度が近い、などの特徴があります。HIDランプの発光原理は蛍光灯とほぼ同様ですが、ランプを点灯させるためには安定器を必要とします。安定器は、HIDランプを安定して点灯させるために必要な照明器具の付属機器で、ランプの放電を開始し、ランプ点灯後は放電を安定させるために必須の装置になります。しかし、近年コンパクトなHIDランプも多数開発されているため、小型スポットライトに採用されています。一般的な照明器具よりも高価ですが、少しづつ値段が下がってきました。

水銀灯(バラストレス)

水銀灯は、HID照明としてもっとも普及しているランプで、水銀とアルゴンを発光管内に封入し、高い水銀蒸気圧で放電するよう設計されています。白熱電球よりも安価で寿命が長く、大光束を得られるため、街路灯・工場など大空間、スタジアムなど、大きな空間に対して高い光束を必要とする空間に広く用いられていました。水銀灯は、発光管内に水銀とアルゴンを封入し、水銀蒸気圧を数気圧以上に高めて発光させるHIDランプの一種で、安定器をランプ内に内蔵し、外付け安定器を不要としたバラストレス水銀灯というタイプが爬虫類飼育でのライトとして使用されています。水銀灯の青みがかった色とバラストフィラメントの発光による赤色系の光により一般的な水銀ランプより演色性は向上しています。

お薦めのバラストレス水銀灯

ジェックスソーラーグローUV

80W
125W

マジで一押し!砂漠の太陽光を再現 爬虫類に必須の太陽光で、カルシウム吸収と体温維持を。砂漠やサバンナに棲息するフトアゴヒゲトカゲなんかに向いています。80Wと125Wのライトがあり、それぞれ14cm、18cmのライトドーム(カバーソケットセット)を使って照射しますが、でケージの上から照射することがができ、ケージ内を広く使え、生体やメンテナンス時のヤケド防止になります。本体カバーはアルミ製で反射率を高めています。ライトドームには便利な中間スイッチと、ライトスタンドに吊り下げるための専用ハンガーも付いていますので、超お得ですよ。

専用ライトカバー

14cm
18cm

専用ライトスタンド

小さいケージや水槽でも、容器の下に差し込んで、ライトドームの高さを簡単に調整できるスタンド。

メタルハライドランプ

太陽光に近いメタルハライドランプ(Metal halide lamp)〔略してメタハラと呼ばれています〕 というライトも販売され、水銀とハロゲン化金属(メタルハライド)の混合常気中のアーク放電による発光を利用した高輝度のランプです。昔は価格が少し高いことが欠点でしたが、価格的にも求めやすくなってきました。しかし、熱効果のあるバスキングライトよりは熱が弱いので、高い温度のホットスポットを必要とする種類では、季節によってバスキングライトが必要になります。

メタハライドランプはライト以外にも安定器がないと稼働しないので、ランプをだけではないので、商品自体が大きいことが欠点でした。最近は安定器が内蔵されたライトが作られるようになりました。

メタハラライト

LED紫外線ライト

現在、爬虫類の飼育に使用できるLEDライトが開発・発売されて話題になっています。紫外線と共に太陽光に近いスペクトルも装備され、省エネルギー設計になっています。さらに簡単にUVインデックスを調整できると言う宣伝文句もある製品もあります。これらの製品の機能に関しては、実際の紫外線を測定した立証が要望され、高性能のものが開発されることに期待しましょう。

爬虫類・両生類の白熱電球の製造中止と水銀灯ランプのLED化の解説はコチラ

ポイントはコレ

  • 昼行性の種類には紫外線が必須
  • 骨代謝に重要な波長はUVB
  • ガラス越しの紫外線は効果なし
  • 紫外線ライトは蛍光灯と電球型タイプがある
  • 紫外線ライトは1年毎に交換するべき
  • バスキングライトと紫外線ライトの両方を備えたメタハラライトとバラストレス水銀灯

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まとめ

現在の技術では、人工的なライトによって、太陽光に含まれる全てのスペクトルを太陽光と同じ強度で含む光を放つことは不可能です。フルスペクトルライトなどの名称で、太陽光のスペクトルに近い光を出すというライトが販売されていますが、スペクトルの含有率は近くても強度が足りなかったり、可視光域ではフルスペクトルでも紫外線が不足しているのが現実です。可能であれば、屋外飼育で太陽光や甲羅干しを十分に浴びさせて、人工的な照明ライトと日光を併用しましょう。

太陽光

参考文献

  • Gardiner DW,Baines FM,Pandher K.Photodermatitis and photokeratoconjunctivitis in a ball python (Python regius) and a blue-tongue skink (Tiliqua spp.).J Zoo Wildl Med40(4):757-766.2009
  • Honkavaara J et al.Ultraviolet vision and foraging in terrestrial vertebrates.OIKOS98: 505–511.2002

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。