【治療】エキゾチックアニマルの体表面積

エキゾチックアニマルの抗がん剤投与量決定に用いられる体表面積は、一般的に体重(g)を用いた以下の計算式(Meehの公式の変形)によって算出されます。

計算式

BSA (m^2) = \frac{K \times [体重(g)]^{2/3}}{10,000}

BSA: 体表面積 (m^2)​体重(g): 動物の体重(グラム)​K: 動物種固有の係数(K値)

※1: ウサギのK値は研究によって異なり、9.9から11.1の範囲で報告されていますが(例: Sato et al. (2018)ではNZW種でK=11.0)、ZehnderらのCTを用いた研究によるK=9.9が腫瘍学の資料(The Pet Oncologist, 2019)でも引用されています。​

ご注意ください​

ジャンガリアンハムスターについて:ジャンガリアンハムスター(ドワーフハムスター)に特化して獣医学的に確立されたK値の報告は、現時点で見当たりません。臨床現場では、近縁種(ゴールデンハムスター)の値を参考にすることもありますが、種や体型が異なるため正確性に欠ける可能性があります。多くの場合、体表面積(mg/m^2)ではなく、体重に基づいた投与量(mg/kg)が用いられます。​専門家による判断の必要性:抗がん剤の投与は非常にリスクが高く、専門的な知識と経験が必要です。実際の投与量計算は、必ず担当の獣医師が、動物の現在の健康状態、体重、品種、併用薬などを総合的に評価して決定する必要があります。この表はあくまで計算係数に関する学術的な参考情報であり、飼い主様ご自身での投与量決定に使用しないでください。​

参考文献

​The Pet Oncologist (2019). FERRET Body Surface Area (BSA) chart. [オンライン資料]​The Pet Oncologist (2019). RABBIT Body Surface Area (BSA) chart. [オンライン資料]​Zehnder AM, Hawkins MG, Kosch T, et al. (2012). Calculation of body surface area via computed tomography–guided modeling in domestic rabbits (Oryctolagus cuniculus). American Journal of Veterinary Research, 73(12):1859-1864. (ウサギ K=9.9)​Sato K, Yoshida T, Kasanuma E, et al. (2021). Body surface area measurements in male Hartley guinea pigs using a computed tomography scanner. Experimental Animals, 70(1):110-115. (モルモット K=8.37)​Sato K, Okuyama K, Kamata S, et al. (1992). [Measurement of body surface area in the golden hamster]. Jikken Dobutsu. Experimental animals, 41(2):221-224. (ゴールデンハムスター K=11.89)​Sato K, Kamata S, Takahashi K, et al. (2018). Measurements of body surface area and volume in laboratory rabbits (New Zealand White rabbits) using a computed tomography scanner. Experimental Animals, 67(4):535-541. (ウサギ・NZW種 K=11.0)

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。