はじめに
ウサギは犬や猫と異なり、カルシウムが豊富に含まれた尿を排泄します。カルシウムが豊富だと尿中に砂や結石が形成されやすくなります。尿路結石は腎臓、尿管、膀胱、尿道に見られ、主に血尿や排尿障害が見られます。疼痛や尿毒症によって食欲不振が見られることもあります。このような症状が見られた場合、動物病院で尿検査や血液検査、X線検査、超音波検査、あるいはCT検査で診断します。ウサキの尿路結石の大半はカルシウム成分なため、大きな結石が認められた場合は外科手術で摘出するしか方法がありません。今回は膀胱結石が尿道まで移動し、尿道を破裂させてしまったため緊急手術をしたウサギの症例をご紹介します。
症例
種類:ウサギ(雑種)
年齢:5歳10ヶ月
性別:オス(未去勢)
主訴:2日前に元気がなかったため別の病院を受診したところ、膀胱炎と尿道閉塞が見つかり、内服薬が処方され、経過観察中でしたが、突然食欲は低下し、排便量も低下し、転院しました。
身体検査
体重:2.1㎏
栄養状態:100%
臨床検査
血液検査
大きな異常は認めませんでした
X線検査
膀胱内に6mm程度の3個の結石が確認されました


超音波検査
膀胱壁は肥厚しており、内腔に結石が確認されました。膀胱の周囲には少量の腹水が認められました。

尿検査
尿道からカテーテルで採取して尿検査を行いました。
尿色:赤色(血尿)
尿比重:1.030(正常範囲)
尿沈査:赤血球と白血球が多く見られましたが、細菌感染は認めませんでした。
診断と治療
臨床検査結果から、結石によって膀胱あるいは尿道に穿孔が見られ、尿が腹腔の中に漏出した可能性が高いと判断しました。今回の症例でも、尿道カテーテルを挿入すると膀胱の外側に出てきてしまったため、尿道が破裂していることが分かり、膀胱結石摘出そして穿孔部位の縫合を目的とした緊急手術を行いました。膀胱結石により長らく刺激を受けていた膀胱は、正常よりも肥厚して硬結していました。膀胱結石を全て摘出し、膀胱およに尿道の穿孔部位を探しましたが、肉眼で確認することができませんでした。穿孔部位を直接縫合することは断念し、尿で汚染された腹腔内を生理食塩水で洗浄してから閉腹しました。術後は数日間尿道カテーテルを設置し、穿孔が塞がるのを待つことにしました。

経過
術後食欲も向上し、排尿も順調でした。手術の傷口や肝心の尿道カテーテルを気にしてかじる様子もなく、元気にすごしてくれました。1週間の入院の間に尿道カテーテルを取り外し、尿の漏出がないことも確認し、無事退院しました。1カ月後の検診で膀胱結石の再発は認められず、その後もなるべくカルシウムが少ない食餌をとる様にし、再発なく過ごしています。
〔分責 ビューティーアキヤマ〕