はじめに
多くの動物は有性生殖という生殖形態をとります。有性生殖の中には母体から卵で産まれる卵性、胎仔で産まれる胎生、体腔内で卵が孵化し胎仔として産まれる卵胎生があります。ヘビのうち7割は卵を産む卵生ですが、ボア科やクサリヘビ科の一部のヘビは胎仔を産む卵胎生(胎生)です。
※最近では卵胎生と胎生を明確に区別しないことも多いです。
症例1
・種類:セントラルアメリカンツリーボア
・搬入:WC
・年齢:不詳
・体重:500g
・主訴:妊娠診断
本症例は食欲不振ならびに腹囲膨大が見られ、妊娠している可能性が高かったです。性格も攻撃的か強く、動くために箱に入れての、無麻酔CT検査で妊娠診断を実施しました。
CT検査
水平断像

胎仔の骨が確認できました。腹部にみえる白い線が胎仔の骨です。
3D画像(腹側観)

CT検査の画像を3Dにすると胎仔の骨格がより鮮明に確認されます。6頭の胎仔を確認することができました。
症例2
・種類:イエローアナコンダ
・年齢:推定8歳
・体重:16㎏(肥満)
・交配時期:約半年前
・主訴:妊娠診断
この症例は大きく、攻撃的な性格とのことでしたのでケージに入れたままCT検査を行うことにしました。
CT検査
水平断像

胎仔は確認できず、腹腔体内に球状構造物が確認され(白い部分)、卵胞と診断されました。また卵胞の周囲に脂肪組織かあり(黒い部分)、肥満状態でした。
まとめ
動物の妊娠診断はX線検査や超音波検査、CT検査などで行います。自験例では、卵胎生のヘビの妊娠鑑定をCT検査を用いて行ったところ、胎仔を明確に確認でき、胎仔数も認識できました。また、CT検査では胎仔の他に体腔内の状態も判断できます。大型のヘビのCT検査では、押さえつけたり、麻酔をかけなくても、大人しい性格てあれば、容器にいれて撮影することも可能です。しかしながら、CT検査では左右と背腹が対称(適切ならポジショニング)で撮影することで本来の内臓および位置が評価されるものですが、無麻酔でのCT検査は卵胎生のヘビの妊娠鑑定においてストレスが最小限であり、有効的な一診断アイテムになりました。
〔文責 さすらいの今井〕