◎カメレオンの飼育(難関を乗り超えよう)

長生きチャレンジ

カメレオンは長生きさせることができず、多くの問題が取り上げられてきました。しかし、近年飼育方法が色々と改良され、少しづつ長生きになってきています。

飼育

カメレオンは飼育が難しい爬虫類です。ストレスの回避ならびにスペースの確保、温度と湿度の設定、空気がよどまない通気性が必要となります。ハンドリングも、自ら手に乗ってくるような個体以外は可能な限り避けるべきです。

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飼育頭数

カメレオンは非常に神経質なため、単独飼育が基本です。特にオス同士の複数飼育は喧嘩や強いストレスになり、たとえ別のケージで飼育をするにせよ、お互いの姿が視界に入らないようにしないといけません。ストレスを受けると体色が変わるので(体色変化)、容易に判断できます。

ケージ

特に上から見下ろされるとストレスを感じるため、ケージを飼育者の目の高さ以上にした方がよいともいわれています。もちろんカメレオンから見える所に、他のペットなどが見えると、それもストレスになります。ケージは床置きせずに、棚あるいは机の上などに置きましょう。カメレオンは樹上性で広い空間が必要となり、なおかつ保温と保湿、通気性に優れたケージが理想です。理想を言えば縦長のテラリウムによる飼育になりますが、掃除や管理がとても難ししく、ペットショップや動物園での展示用に限られます。

一般の家庭では金網ケージ、ガラスやアクリル製ケージ、ネットケージが使用されていますが、それぞれメリットとデメリットがあります。

金網ケージ

金網なので通気性に優れていますが、保温性が劣ります。鳥カゴとし商品が多数あるので、十分な高さや大きさがある商品を選んで下さい。また鳥カゴは比較的安価で、丈夫なものが多いことも魅力です。しかし、金網の幅が大きめであるため、ある程度の大きさのカメレオンからしか使えません。幼体では金網の隙間から脱走するため、カメレオンの大きさを考えて選びます。

爬虫類用ガラス/アクリルケージ

ガラスやアクリルケージはいわゆる水槽タイプのケージです。特に爬虫類用ケージとして販売されていると、正面が開く構造のため、上から覗き込まれるのを嫌うカメレオンのストレスを最小限にできます。穴も空いていないので、カメレオンが観察しやすく、保温性も優れています。しかし問題は、通気性が劣るので、カメレオンが嫌うよどんだ空気が溜ります。

爬虫類用ケージならば、通気性が考えられた構造にはなっていますが、金網やメッシュケージには劣ります。しかし、前面が開閉するため、世話が楽にでき、カメレオンにもストレスがかかりません。

メッシュケージ

多数の小さなメッシュ穴で覆われたケージです。通気性も優れ、正面がひらく構造にもなっており、カメレオンのストレスを減らす・・・高さがある商品が多く、まるで金網ケージとガラスやアクリルケージの良い所をとったカメレオンに適したケージかもしれません。なお、メッシュの素材なのでカメレオンを観察しにくいという欠点があります。もちろん保温性もガラスやアクリルケージよりは劣ります。

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レイアウト

ケージ内には、植物や流木、木の枝や植物の弦、ヒモなどを組み合わせて、行動するスペースや通り道、体を暖める場所、水やエサをとる場所、隠れ家などをレイアウトします。

通り道

木の枝は細くても、カメレオンはしっかりと指趾や尾でつかむむことができます。

器用に植物の弦やヒモなども伝って歩けます。

シェルター

葉の多い植物をレイアウトすると、移動する通り道以外にも、シェルター的な隠れ家にもなります。なお、エボシカメレオンは植物も食べるので、植物の葉を食べることもあります。推奨できる植物はポトス、パキラ、ガジュマル、ベンジャミンなどですが、毒性の問題や食べられて枯らすことが多いため、人工の植物を設置しても構いません。

床敷

カメレオンは樹上性で、時に床に降りてくる程度なので、床敷の選択は大きな問題になりません。樹上で排泄を行い、それらが床に落ちるため、便宜性を優先的に考えるならば新聞紙などの紙でもよいでしょう。

照明・温度・湿度

カメレオンの分布域はアフリカ大陸を中心に、マダガスカル、地中海沿岸、アラビア半島、インド、スリランカにまで及ぶが、その生息環境は標高0メートルの海岸低地から3,000メートルを超える高山地帯まで、垂直的にも水平的にも極めて広範です。爬虫類学的な観点から、カメレオンの飼育管理を論じる際、最も重要な分類指標の一つが山岳系と森林・低地系という環境ニッチによる区分になります。これらは単なる地理的な生息地の違いにとどまらず、代謝効率、至適温度域、水分利用メカニズム、そしてビタミン代謝に至るまで、生理学的な要求に根本的な差異をもたらしています 。

山岳系カメレオン

山岳系カメレオンとは、主にアフリカ東部のケニア、タンザニア、ウガンダなどの山岳地帯において、標高1,500~3,000メートルを超える高地に生息する種を指します。これらの地域は熱帯に位置しながらも、高度によって気温が抑制され、日中と夜間の激しい温度差、ならびに頻繁に発生する霧による高湿度が特徴です。   

ジャクソンカメレオン

ジャクソンカメレオンは山岳系種の代表格で、ケニアやタンザニアの標高1,600〜2,400メートル付近の森林、低木地、あるいは植生の豊かな庭園に生息します。ハワイやフロリダ、カリフォルニアにも帰化個体群が存在するが、それらは特定の微気候に適応したものになります。  本種は卵胎生であり、メスは卵ではなく、薄い膜に包まれた幼体を直接出産します。これは高地の低温環境において、地面に産み落とされた卵が孵化に必要な温度を維持することが困難であるため、母体内で発生を完遂させるという適応の結果です。山岳地帯の冷涼な気候に適応しており、30°Cを超える高温に長時間曝されると、急速に代謝ストレスを受け、死に至るリスクが高まります。   

山岳系カメレオンの生理において、最も特筆すべきは夜間の温度滴下への依存です。高標高地では、日没とともに気温が急激に低下します。これに合わせてカメレオンの代謝も低下し、身体的な休息とエネルギー保存が行われます。飼育下において夜間も高い温度が維持されると、代謝が下がらずに生理的疲労が蓄積し、原因不明の突然死や免疫力低下を招くことが、獣医学的に強く示唆されています。   

森林・低地系カメレオン

森林・低地系種は、マダガスカルやアフリカの熱帯雨林、沿岸部の低地、あるいは乾燥した低地の河川沿いなどに生息する種を含みます。これらの地域は年間を通じて気温が比較的高く安定しており、湿度も維持されやすいです。   

パンサーカメレオン

マダガスカル北東部に分布するパンサーカメレオンは、原始的な森林よりも、森林の縁、二次林、川沿いの低木、あるいは道路沿いの植生などの開放的なエッジ環境を好みます。これは日照を確保しやすく、また獲物となる昆虫が豊富な場所を選択しているためです。 オスはメスよりも高い位置に陣取る傾向があり、視覚的なコミュニケーションを通じて縄張りを防衛します。   

エボシカメレオン

イエメンやサウジアラビアを原産とする本種は、低地系の中でも乾燥耐性が強く、特異な生態を有しています。 頭部の巨大なカスクは、熱放散の役割を果たすとともに、霧などの微量な水分を凝集させて口元に導く機能があると考えられています。 カメレオンとしては珍しく、昆虫だけでなく多肉植物の葉や果実を摂取する習性がある 。これは乾燥した生息地における水分補給と栄養確保のための適応です。 初心者に適しているとされるが、依然として高湿度と換気の両立というカメレオン特有の要求は存在します。   

照明

カメレオンは昼行性で、紫外線ライトをケージ全体に照射するように設置します。色温度の補正するためにナチュラルライトも併用が理想です。

しかし、カメレオンは強い光を好まないため、輝度の低いライトを選ぶことと、植物などで身を隠せる日蔭(隠れ家)も設けないといけません。夜間は爬虫類用の紫外線ライトとバスキングライトは消灯します。なお、UVライトとナチュラルライトを一緒に照射できるライトスタンドを使用するのか便利です。

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温度

基本的にカメレオンは温暖で、多湿かつ通風性も確保できる環境が必要です。ホットスポットで体温を至適体温(PBT)にするために、それぞれのカメレオンに合わせた至適環境温度域(POTZ)を設けます。

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ケージの上端にバスキングライトを設置して局所的に高温の部分を作り、体温を上げるホットスポットを作って下さい。カメレオンは高温すぎるのもいけないため、温度管理が難しいです。体温が上がり過ぎた場合は、カメレオン自身で移動できるようにレイアウトも考えないといけません。カメレオンの飼育では、湿度はもちろんのこと、温度管理も難しく、温度計/湿度計、サーモスタットも設置した方が適切でしょう。

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項目山岳系カメレオン森林・低地系カメレオン
環境温度22~27℃24~31℃
バスキングスポット温度28~29℃ 32~35℃
夜間温度13~18℃ 18~24℃
表:カメレオンの温度設定

山岳系種、特にジャクソンカメレオンにおいては、日中の温度が29℃を超えると熱ストレスによる倦怠感や拒食が生じやすいため、厳密な管理が求められます 。逆に、森林系種であっても、夜間には照明を消し、室温程度20℃前後まで下げることで、自然な生理サイクルを促すことが推奨されています。

湿度と換気

カメレオン飼育において最も失敗が多いのが、湿度と換気のバランスです。高湿度を維持しようとして密閉性の高い容器(ガラス水槽など)を使用すると、空気の停滞を招き、呼吸器感染症や皮膚の真菌症を引き起こします。

換気

カメレオンは、空気の流れを感じることでストレスを軽減し、また呼気による湿気を速やかに排出する必要があります 。そのため、少なくとも二面、理想的には全面がメッシュ構造のケージが推奨されます 。

湿度サイクル

24時間常に高湿度である必要はありません。自然界では朝露と夜間の冷え込みによって湿度が上昇し、日中は日光によって乾燥します。夜間から早朝80〜100%にするのが理想で、霧吹き機械による加湿を行います。日中は40〜60%の設定で、通気によって表面を乾燥させることも必要です。

水分補給

止水(皿の水)を認識しないため、葉を伝う水滴を再現するドリップシステム、あるいは1日複数回の噴霧が必要です。慢性的な脱水は腎不全や痛風の直接的な原因となります 。

湿度(飲水)

湿度は霧吹き機械による加湿で設定しますが、飲水を施すため、ケージ内に水を散布したり、噴霧することでも湿度に影響されます。

通気性も必要で、空気がよどんではいけません。このような湿気のある環境で通気性がある環境作りが難しいのです。エアコンや扇風機で軽く送気するのもよいですが、温度が下がりやすい欠点があります。カメレオンは動くものしか餌や水を認識しないため、水容器の水はそのまま置いても水と認識しません。

葉の表面できらめく水滴、枝などから垂れおちる水滴、水面が揺らめいているものからしか飲みません。

水を与えるためにはケージ内を霧吹きするか、専用のドリップボトル(しずくが常時垂れるような装置)をつけるか、あるいは水を入れた容器にエアレーションをしかけ、水面に動きをつけるなどの工夫が必要となります。

カメレオンは水不足になると舌を伸ばし、餌を捕らえるのが難しくなるので、他の爬虫類より水不足が大きな問題となります。上記のような給水スタイルは、必然的にケージの中が多湿になります。ガラスやアクリル製のケージの場合、蒸れ過ぎることがあるため、小型のファンを設置します。

近年は自動で霧を発生させて噴霧できる装置のミスティングシステムという便利な商品が販売されていますデジタルタイマーで噴霧するタイミングと回数を指定すれば自動的に噴霧を行いますので、カメレオンの飼育でも使われています。しかし、加湿のし過ぎには注意して下さい。エボシカメレオンは他の種に比べて高温や乾燥にも比較的強く、カメレオンの中では最も飼いやすいです。飼育のしやすさで言えばエボシカメレオンが入門種でしょう。

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食餌

カメレオンは昆虫食で、主にコオロギワームを与えます。成体には1~2日毎、幼体には毎日与えて下さい。

餌のコオロギワームは、基本的に生き餌しか食べません。ケージの中に生き餌を入れて置くと、カメレオンは餌を見つけ、舌を伸ばして捕獲します。

同一の餌だけを与えていると、飽きて食べなくなることもあります。野生で捕獲したバッタ、カマキリ、セミなども与えることができます。与える昆虫の大きさは、口の大きさに入るサイズが理想で、馴れてくると、昆虫を目の前に持っていくと食べるようになります。

餌となる昆虫は栄養の偏りがあるため、栄養剤をエサに添加する方法が常法とされています。特にコオロギワームはカルシウムが足りないため、くる病・代謝性骨疾患になりやすく、カルシウム剤をサプリメントとして多く使われています。

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エボシカメレオンは雑食性で、成体になるにつれて植物食が強くなり、チンゲンサイ、コマツナなどの野菜も食べるようになります。エボシカメレオンは乾燥した森林に生息しており、水分を得るためにも植物質を得るようになったのでしょう。

ケア

カメレオンには爪切りなどのケアは不要です。ストレスがかからないように、自然に飼えるか考えてください。

掃除

カメレオンを触ったりした後はよく手を洗い、そしてケージなどの掃除も衛生的にして下さい。爬虫類はサルモネラ菌を保菌していることが多いです。爬虫類に常在しているサルモネラ菌は爬虫類には無症状のことが多く、人に感染すると嘔吐や下痢などの消化器症状が起こり(サルモネラ中毒)、人獣共通感染症(ズーノーシス)として有名です。掃除の後にケージも殺菌するために日光浴や消毒をするように心がけましょう。

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カメレオンの糞や尿の掃除や消毒はもちろんですが、臭う場合は以下の対策を読んで考えてみて下さい。生き餌のコオロギが死んでいて悪臭の原因になることも多いです。

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ポイントはコレ(ケア)

・人に馴れると抱っこもできる
・掃除は水洗いだけでなく消毒もする
・排泄物の量が多いので消臭対策もする

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この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。