クランウェルのモルフがメイン
市場に流通している多様な「モルフ」のほとんどはクランウェルツノガエルです。クランウェルツノガエルは、飼育下での繁殖が容易で、色彩や模様の遺伝的変異が豊富だったため、世界中のブリーダーによって長年にわたり選択交配が進められました。その結果、非常に多くのモルフが確立されています。ベルツノガエルは、その「野生型の完成された美しさ」(鮮やかな緑と赤のコントラスト)が魅力とされており、モルフの作出は活発ではありません。また、クランウェルに比べて繁殖がやや難しいとされてきた背景もあります。
クランウェルツノガエル
クランウェルは「モルフのデパート」と言えるほど種類が豊富です。これらは主に「色彩変異」「模様変異」「その他の変異」の組み合わせで成り立っています。
色彩変異(アルビノ系)
多くのモルフの基礎となっているのが、黒色色素(メラニン)を欠く「アルビノ」です。
アルビノ (Albino)
最もポピュラーなモルフ。黒い色素がなく、体色は黄色やオレンジ色、目は赤くなります。ここからさらに細かく選別されます。

ストロベリー (Strawberry Albino)
アルビノの中で、特に赤み(ピンク色)を強く発現するように選別交配されたモルフです。
アプリコット (Apricot Albino)
アルビノの中で、鮮やかなオレンジ色(杏色)を強く発現するように選別されたモルフです。多少の赤みに個体差があります。


パイナップル / ライムグリーンアルビノ
アルビノですが、幼体時にうっすらと緑色が乗る(ように見える)タイプです。成長とともに鮮やかなレモンイエローになることが多いです。

色彩変異(非アルビノ系)
アルビノではない、色素の選別によるモルフです。
ノーマル(グリーン / ブラウン)
野生型です。緑色が強い個体(グリーン)と、茶色が強い個体(ブラウン)がいます。
ペパーミント (Peppermint)
グリーンの個体から、赤色や茶色の色素を減らすように選別されたモルフ。青みがかった緑色や、明るいミントグリーンが特徴です。

マスカット (Muscat)
ペパーミントに似ていますが、より黄緑色(マスカットグリーン)が強く出る系統です。
グリーンアップル
明るい黄緑色の地色に、褐色の斑紋が入ります。

模様(パターン)の変異
体色に、以下の模様の遺伝子が組み合わさります。
パターンレス / スポットレス (Patternless)
背中や体側の特徴的な斑紋(スポット)が消失するモルフです。「パターンレス・グリーン」や「パターンレス・アルビノ(ソリッド・アルビノとも呼ばれる)」のように、色彩と組み合わせて呼ばれます。

ストライプ (Stripe)
背中の中央に、線状の模様(ストライプ)が入る変異です。
モザイク / パイド (Mosaic / Pied)
色や模様が不規則なパッチ(まだら)状になるモルフです。左右非対称になることも多く、予測不能な模様が魅力です。

パラドックスアルビノ
突然変異個体で、体は茶褐色で顔の一部が色が抜けており、赤目をしています。パラドックス(Paradox)とは矛盾という意味で、高額に取引きされるカラーです。

その他の変異
トランスルーセント (Translucent)
皮膚の色素が薄く、透明感を持つモルフ。幼体時は内臓が透けて見え、目が黒一色(ソリッドブラックアイ)になることが多いのが特徴です。
アンスラサイト / ブラック (Anthracite / Black)
黒化個体(メラニスティック)で、非常に希少です。全身がほぼ真っ黒になります。体色や模様なその組み合わせで、「ストロベリー・パターンレス・トランスルーセント」のように、非常に複雑で多様なモルフが作出されています。
ベルツノガエル
前述の通り、ベルツノガエルにはクランウェルのような遺伝的に確立された「モルフ」は、ほぼ存在しません。市場で見かけるベルツノガエルのバリエーションは、主に「野生型の中での色彩の個体差」や「選別交配による特定の色の強調」です。
スタンダード(ノーマル)
一般的なベルツノガエル。緑色の地に、鮮やかな赤色と黒い縁取りの斑紋が入ります。この緑と赤のバランスは個体差が非常に大きいです。
グリーンタイプ / グリーン
スタンダードの中でも、特に緑色の面積が広く、鮮やかに発色する個体を選別したものです。

レッドタイプ / レッド
スタンダードの中でも、特に赤色の面積が広く、強く発色する個体を選別したものです。

パーフェクトレッド
レッドタイプをさらに選別し、緑色の部分がほぼ消失し、全身が濃い赤色に染まるように改良された最高峰の個体です。
「アルビノのベルツノガエル」は存在する?
ペットショップなどで「アルビノ・ベルツノガエル」として販売されている個体を見かけることがありますが、それらはほぼ100%が「アルビノ・クランウェルツノガエル」または「アルビノ・ファンタジー(クランウェルとアマゾンツノガエルのハイブリッド)」の誤認・誤表記です。純血のアルビノ・ベルツノガエル(C. ornata)は、もし存在するとしても非常に希少で、一般市場に流通することはまずありません。
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