◎日本におけるカメレオンの輸入

国際爬虫類貿易における日本市場

エキゾチックペットとしてのカメレオンは、その特異な生理学的特性と視覚的な魅力から、世界的な需要が絶えない分類群です。日本は、歴史的かつ統計的に見て、米国に次ぐ世界有数の爬虫類輸入大国で、その市場動向は国際的な野生生物取引に多大な影響を及ぼしています。1977年から2001年にかけての長期的な統計データによれば、米国が全世界の輸入量の69%を占める圧倒的な市場であった一方で、日本もまた欧州諸国(オランダ、ドイツ、ベルギー等)と並び、主要な輸入拠点として機能してきました〔Carpenter et al.2024〕。

21世紀に入り、日本市場の重要性はさらに増しています。2000~2019年までのワシントン条約(CITES)取引データベースの分析によれば、この20年間で合計327,522頭のカメレオンが合法的に国際取引されましたが、日本はそのうちの約13%を輸入しており、ドイツ(10%)を抑えて米国(46%)に次ぐ主要な受入国となっています。経済的価値の側面から見ると、2022年における日本の生きた爬虫類の輸入総額は約1,250万ドル(約18億円)に達しており、世界第2位の輸入額を記録しています 。これは、日本国内において高付加価値な種や希少な変異個体(カラーモルフ)に対する旺盛な需要が存在することを示唆しています〔Isaac et al.2024〕。

主要な輸出拠点と供給ルート

国際市場に供給されるカメレオンの約91%は、タンザニア、マダガスカル、モザンビーク、ウガンダ、ガーナ、カメルーンの6カ国に集中しています。中でもタンザニアは世界最大の輸出源であり、全輸出量の34%(約187,367頭)を占めます 。日本はタンザニアから輸出される野生個体の約12%を受け入れる主要なパートナーでもあります〔Isaac et al.2024〕。タンザニアからの輸出においては、特定の種に需要が極端に偏る傾向が見られます。フィッシャーカメレオン(Kinyongia fischeri)やタベタカメレオン(K. tavetana)といった「エボシ系」ではない複雑な形態を持つ種が、日本のマニアックな市場において高い支持を得ています。

輸出国全世界取引におけるシェア主な輸出先と日本の立ち位置
タンザニア34%世界最大/日本の輸入量の大きな割合を占める
マダガスカル主要供給国パンサーカメレオン、パーソンカメレオン等の高額種
モザンビーク主要供給国野生個体のバルク輸出が中心
ウガンダ主要供給国山岳系カメレオンの供給拠点
ガーナ主要供給国セネガルカメレオン等の西アフリカ種
カメルーン主要供給国三本角等の多角種、多種多様な固有種
表:カメレオンの日本における輸入

輸入頭数の統計

日本への爬虫類輸入は、2016年頃を境に顕著な増加に転じています。財務省の貿易統計および環境省の資料によれば、トカゲ亜目を含む「その他の有鱗目」の輸入量は、2021年には2016年の約3倍にまで急増しました〔環境省〕 。この背景には、ペットショップでのヒョウモントカゲモドキ等の普及に伴う爬虫類飼育の一般化があるが、カメレオンに関してもその波及効果は及んでいます。

環境省.爬虫類の輸入.https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/h29_10/mat02_02.pdf

主要流通種の統計的特徴

日本国内で流通するカメレオンは、大きく分けて野生個体(WC)と飼育個体(CB)に分類されます。統計上、世界的にはCB個体の割合が増加傾向にありますが、日本市場に流入する安価な個体群、特にタンザニアやアフリカ諸国原産の種は、依然としてその大半(ほぼ100%に近い場合もある)が野生個体です。

分類(属)取引の特徴日本における市場価格
Furcifer(パンサー等)マダガスカル原産。CB化が進んでいるがWCも根強い 非常に高い。カラーモルフが重視される
Chamaeleo(エボシ等)イエメン原産。強健でCB個体が主流 入門種として安定。安価に流通
Trioceros(ジャクソン等)山岳系。WCの流入が多い。温度管理が困難 中上級者向け。形態の複雑さが人気
Kinyongia(フィッシャー等)タンザニアエンドミズム(固有種)が多い 専門性が高く、特定のコレクターに需要
Rhampholeon(コノハ等)地表性。非常に小さく繊細 寿命が短く、WCの輸入が断続的
表:各カメレオンの輸入

マダガスカル産のパンサーカメレオン(Furcifer pardalis)などは、地域ごとの色彩変異(ローカリティ)がステータスシンボルとして扱われ、1頭あたり数十万円で取引されるケースも珍しくないです。一方で、セネガルカメレオンのように数千円で大量に輸入される種も存在し、その価格差は飼育環境の質や獣医学的ケアの優先順位にも影響を及ぼしています。

参考文献

  • Carpenter AI et al.The dynamics of the global trade in Chameleons. Biological Conservation 120(2):291-301.2024
  • Isaac MC et al.Status and trends in the international wildlife trade in Chameleons with a focus on Tanzania.PLoS One19(5):e0300371.2024

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。