テグー
テグーはトカゲ亜目テユー(Teiidae)科に属する大型のトカゲの総称であり、主に南米大陸に広く分布しています。ペット市場においてテグーとして認識される種は、現在は主にサルバトール(Salvator)属と(Tupinambis)属の大型種に限定されます。これらのトカゲは、その知性の高さと比較的高い馴れやすさから、大型爬虫類愛好家の間で高い人気を博しています。
テグー類はすべて陸生(一部は半水生)の昼行性です。主に肉食または昆虫食で、中には少量の植物質を餌に含む種もいます。繁殖は基本的に卵生です。
分類においては近年まで混乱が見られましたが、分子系統学的な研究の進展により、分類が見直されました。かつて広範にTupinambis属に含まれていた種のうち、アルゼンチンブラックアンドホワイトテグーなどの主要な種は、現在ではSalvator属に再分類されています。この分類名の変更は、学術論文や獣医学的な参考文献を参照する際に、種の生態学的および医学的な情報を正確に把握するために極めて重要となります。
| 亜科 | 属 | 種類 |
| Teiinae | Ameiva属 | ジャングルランナー(Ameiva ameiva) Junglerunnersなど |
| Ameivula属 | ||
| Aspidoscelis属 | ニューメキシコハシリトカゲ(Aspidoscelis neomexicanus) South American whiptail lizardsなど | |
| Aurivela属 | ||
| Cnemidophorus属 | ||
| Contomastix属 | ||
| Dicrodon属 | ||
| Glaucomastix属 | ||
| Holcosus属 | ||
| Kentropyx属 | ||
| Medopheos属 | ||
| Pholidoscelis属 | ||
| Teius 属 | ||
| Tupinambinae | Callopistes属 | |
| Crocodilurus属 | ||
| Dracaena(カイマントカゲ)属 | ガイアナカイマントカゲ(Dracaena guianensis) Northern caiman lizardなど | |
| Salvator (サルバトール)属 | レッドデグー(Salvator rufescens) Red Tegu アルゼンチンブラックアンドホワイトデグー(Salvator merianae) Argentine Black and White Tegu イエローデグー(Salvator duseni) Yellow tegu | |
| Tupinambis(テグー)属 | ゴールデンデグー (Tupinambis teguixin) Golden teguなど |
日本国内で主にペットとして流通し、飼育されているテグーは、その特徴的な外観とサイズから、アルゼンチンブラックアンドホワイトテグーとレッドテグーが代表的です。
アルゼンチンブラックアンドホワイトテグー Salvator merianae
分類
1839年に本種はSalvator merianaeとして記載されました。しかし、1845年から154年間、ゴールデンデグー)Tupinambis teguixinと混同され、同種のシノニムとみなされていました。1995年に、その後の研究でゴールデンテグーが別種であることが示されたため、再びTupinambis merianaeとして種別されました。そして、2012年に復活したサルバトール属にSalvator merianaeとして再分類されました〔 Harvey et al.2012〕。S.merianaeは、ゴールデンテグーの別名であるコロンビアンブラックホワイトテグーと区別するためにアルゼンチンブラックホワイ・テグーと呼ばれています。S.merianaeとT.teguixin は鱗の数によって区別できます。S.merianae には、目と鼻孔の間に2 つの眼窩鱗(頬板)がありますが、T. teguixin には1つしかありません。原産地のアルゼンチン中部ではレットテグー(S.rufescens)と自然に交雑することが知られています〔Cabaña et al.2020〕。また、アルゼンチンジャイアントテグー、ブルーテグー、ジャイアントテグーとも呼ばれることがあります。
分布
アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイなど、南米中央部の熱帯雨林、サバンナ、半砂漠
身体
本種はテグーの中でも特に大型化する傾向があり、成体のオスはメスよりもはるかに大きく、成熟すると全長91cmに達します。さらに成長を続けると全長120~140cmに達することもあります。成体のメスは体重が2.5~7.0kgに達します。
体色
孵化したばかりは、鼻先から首の途中までエメラルドグリーンで、黒い斑点があります。このエメラルドグリーンは、脱皮後数ヶ月で黒くなります。幼若個体は尾に黄色と黒の縞模様がありますが、成長するにつれて体に近い黄色の縞模様は、弱い斑点のある部分に変化して薄くなります。成体になると白色と黒色のバンド模様、腹部がオレンジ色を帯びています。縞模様が少ないほど、年齢を重ねていることを示しています。流通量が最も多いものは黒の面積が多い個体で、他にも白色が多いものや、腹部のオレンジが体表にまで侵食しているものもいます。白色の割合は多めで青系に光って見える個体をブルーテグーと呼ばれています。
レッドテグー Salvator rufescens
分布
ブラジル南部、アルゼンチン北西部、パラグアイ、ボリビアといった南米の森林地帯
身体
アルゼンチンブラックアンドホワイトテグーに比べると若干小型で、最大頭胴長61.4cmです。成長したメスの全長は105cm、オスはさらに大きく140cmにもなります。
体色
孵化したての時には、赤くありません。通常は茶色がかった緑色で黒い横縞と切れ切れの白色を帯びた縦縞が入ります。成熟すると赤色に変わり、オスは通常メスよりも明るい色になります。

生態
アルゼンチンの温帯気候に生息し、冬は冬眠し、最も寒い時期には体を埋めて休眠状態を保ちます。地域によっては最大7ヵ月も休眠状態が続きます。また、他の季節にも習性で穴を掘ることがあります〔Cabaña et al.2020〕。
デグーの特徴
寿命
寿命は12~15年で、飼育下では20年以上生きることができます。
食性
雑食性で、野生の幼体は昆虫、環形動物、甲殻類、クモ、カタツムリなど、幅広い無脊椎動物を食べることが観察されています。また、果物や種子も食し、成長するにつれて植物の消費量が増えてきます。鳥や他の爬虫類の巣から卵を探し出し、小鳥や魚、カエル、他のトカゲ、ヘビ、小型哺乳類(げっ歯類など)などの脊椎動物を食べることもあります〔Kiefer et al.2002,Colli et al.1998〕。また食べられる動物の死骸なども食します。
人慣れ
本種は非常に知性が高く、適切な社会化が行われた場合、人の手から餌を食べたり、ハンドリングが可能になることも少なくありません。
頑丈な鱗
腹側には明確な横列を形成する大きな長方形の鱗があり、背側には一般的に小さな粒状の鱗があります。
丈夫な四肢
テグーは高速で走ることができ、短距離であれば二足歩行で走ることができます。

舌出し
舌はヘビのように二叉になっています。匂いを感知するために、 舌についたにおいの分子を口腔内に一対あるヤコブソン器官へ運びます。 舌先が左右に分かれるのは、同器官が左右にあるためです。
冬眠
原産地では冬季の低活動期が存在し、冬眠をする個体群がいます。
尾の自切
尾を自切する防御機構を持っています 。しかし、尾は攻撃者や潜在的な捕食者を叩くための武器としても使われます。
単為生殖
いくつかの種類では雄が少ないか存在せず、単為生殖が行われます。しかし、オスが存在しない場合でも、発情期にはメス同士で擬似交接を行います。このことで繁殖力が増加するとされているが、この主張には異論もでています。また、擬似交接時に下にいた個体は、産卵時に大きな卵を産む傾向にあります。子は母親の遺伝的クローンであり、進化や環境への適応がどのように起こるのかという観点から注目されています。
雌雄鑑別
アルゼンチンブラックアンドホワイトデグーは生後8ヵ月齢になると、外観で性別を容易に判別できます。尾の付け根にある総排泄孔は、オスは膨らんでいあmすが、メスは平うになっています。オスは外側翼突筋の肥大により、顎が大きく発達してますが、メスの顎は流線形です〔Olivier 1980〕。なお、レッドデグーは性的二形と体色の変化が特徴になります。成長したオスは喉元が膨らみ、全身が鮮やかな赤色を呈します〔Blengini et al.2016〕。

内温性
テグーは本来の生息地では、寒い時期のほとんどを巣穴の中で餌を食べずに冬眠し、春になると繁殖期に巣穴から出てきます。冬眠中は代謝によって熱を発生させ、体温を巣穴の温度より数度高く保つため、部分的内温動物と呼ばれます。この自立した内温行動は繁殖期にも続きます。この内温行動は産卵のための性別に偏った進化的適応ではなく、オスとメスの両方が無差別にこの行動を示します〔Tattersall et al.2016〕。夜間の体温が周囲温度より最大10℃高い、数少ない半温血トカゲの一種であることが最近明らかになりましたが、哺乳類や鳥類などの真の内温動物とは異なり、これらのトカゲは繁殖期(9~12月)にのみ体温調節を行うため、季節性生殖内温性を持つと言われています〔Hervas et al.2024〕。
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参考文献
- Blengini, Cecilia S.; Naretto, Sergio; Cardozo, Gabriela; Giojalas, Laura C.; Chiaraviglio, Margarita.Relationship between pre- and post-copulatory traits in Salvator rufescens (Squamata: Teiidae).Biological Journal of the Linnean Society119(4):932‐942.2016
- Cabaña Imanol et al.Hybridization and hybrid zone stability between two lizards explained by population genetics and niche quantification.Zoological Journal of the Linnean Society190(2):757‐769.2020
- Colli, Guarino R.; Péres, Ayrton K.; Cunha, Hélio J. da.A New Species of Tupinambis (Squamata: Teiidae) from Central Brazil, with an Analysis of Morphological and Genetic Variation in the Genus.Herpetologica54(4):477‐492.1998
- Harvey MB,Ugueto GN,Gutberlet RL Jr.Review of teiid morphology with a revised taxonomy and phylogeny of the Teiidae (Lepidosauria: Squamata).Zootaxa3459(1):1-156.2012
- Hervas LS et al.Mitochondrial function in skeletal muscle contributes to reproductive endothermy in tegu lizards (Salvator merianae) ACTA PHYSIOLOGIA240(7).2024
- Kiefer, Mara Cíntia; Sazima, Ivan. Diet of juvenile tegu lizard Tupinambis merianae (Teiidae)” (PDF). pp. 105–108. in Short Notes.Amphibia-Reptilia23(1):93‐124.2002
- Olivier R.The trigeminal jaw adductor musculature of Tupinambis, with comments on the phylogenetic relationships of the Teiidae (Reptilia, Lacertilia).Zoological Journal of the Linnean Society69(1):1‐29.1980
- Tattersall GT et al.Seasonal reproductive endothermy in tegu lizards.Science Advances2(1).2016
