舌が青いツチノコ
名前の通り青い舌を持つトカゲです。特にオスは頭部が大型化し、体幹全体が太いためにツチノコのような外観のトカゲとも言われています。1970年代から日本で多く飼育されるようになり、想像される姿が似ていること、また日本ではその頃からブームとなったことから、ツチノコの正体はペットのアオジタトカゲが野生に放たれた個体を有力とする論説があります。

分類
有鱗目トカゲ科アオジタトカゲ属
学名:Tiliqua spp.
英名:Bluetongue skink

分布
インドネシア、パプアニューギニア、オーストラリア
品種
ペット市場で流通する個体は、主にインドネシア種群とオーストラリア種群との二つに大別され、それぞれが異なる環境適応を示しているため、飼育下での亜種識別は臨床管理上、極めて重要です。
| 種類 | 和名/学名 | 英名 | 分布 | 色と模様 | 地域個体群 |
| Tiliqua gigas | オオアオジタトカゲ T.g.gigas | Indonesian blue-tongue skink | インドネシア、パプアニューギニア | 灰褐色や明褐色で、細く黒い横帯が入ります。四肢は単色、暗色をしています。 | ハルマヘラアオジタトカゲ セラムアオジタトカゲ ナビレアオジタトカゲ アンボンアオジタトカゲ |
| Tiliqua gigas | メラウケアオジタトカゲ T.g.evanescens | Merauke blue-tongued skink | インドネシア(アンボン、セラム島、ハルマヘラ島、ケ、アル)、パプアニューギニア、ジョビ、アドミラル諸島、ニューブリテン島、ビスマルク諸島 | 四肢にやや色の濃い斑点があり、首の後ろの中央に一本の縞模様が入ります。 | |
| Tiliqua gigas | ケイドアオジタトカゲ T.g.keyensis | Key Island blue-tongued skink | インドネシア(アル、ケイ諸島、イリアン ジャヤ ) | 体形は亜種内では最も細長く、背面の横帯が不鮮明になり、黄褐色や緑褐色の斑紋が入ります。 | ケイアオジタトカゲ アルーアオジタトカゲ |
| Tiliqua scincoides | タンニバールアオジタトカゲ(キメラアオジタトカゲ) T.s.chimaera | Tanimbar blue-tongued skink | インドネシア(タニンバル諸島) | 最小亜種で、体色は黄褐色で、成長に伴い斑紋は不鮮明になります。 |
| 種類 | 和名/学名 | 英名 | 分布 | 色と模様 | 地域個体群 |
| ハスオビアオジタトカゲTiliqua scincoides | ヒガシアオジタトカゲ T.s.scincoides | Eastern Blue-tongued skink | オーストラリア東部(ニューサウスウェールズ州、ノーザンテリトリー州、クイーンズランド州、南東オーストラリア州、ビクトリア州、西オーストラリア州北西部) | 銀灰色で、背中と尾には幅広の暗褐色または黒色縞模様が入ります。 | シドニー クイーンズランド ニューサウスウェルズ |
| ハスオビアオジタトカゲ Tiliqua scincoides | キタアオジタトカゲ T.s.intermedia | Northern blue-tongued skink | オーストラリア北部 | 明るいオレンジ色から淡い桃色、あるいは黄色を帯びた色で、側面と背中には濃い縞模様が入り、腹側は明るいクリーム色をしています。 | ノーマル キンバリー |
| Tiliqua multifasciata | チュウオウアオジタトカゲ (セントラルブルートング,ホソオビアオジタトカゲ) | Centralian blue-tongue skink | オーストラリア中央部(クイーンズランド州、西オーストラリア州、ノーザンテリトリー) | 薄灰色や薄褐色で、背面には胴体に9-14本、尾に8-10本のオレンジ色を帯びた褐色の細帯が入ります。眼後部には太く明瞭な黒い筋模様が入ります。 | |
| Tiliqua occipitalis | ニシアオジタトカゲ | Western blue-tongued skink | オーストラリア西部(西オーストラリア州、ビクトリア州北西部、南オーストラリア州) | 灰褐色や黄褐色で、背面には胴体に4-6本、尾に3-6本の暗色の太い横縞が入ります。眼後部には太く明瞭な黒い筋模様が入ります。 | |
| Tiliqua nigrolutea | マダラアオジタトカゲ | Blotched blue-tongued skink | オーストラリア(ビクトリア州境とブルーマウンテンズの間の高地/タスマニア島やバス海峡の島々) | 濃い茶色または黒色で、黄色、クリーム色、ピンクの斑点が入ります。 | ハイランド ローランド カトゥンパ タスマニア アルパインド |
| Tiliqua rugosa マツカサトカゲ | ニシマツカサトカゲ T.r.rugosa ヒガシマツカサトカゲ T.r.asper ロットネスマツカサトカゲ T.r.konowi シャークベイマツカサトカゲ T.r.palarra | Pinecone lizard、 Shingleback lizard、 Shingle-Back、 Sleepy Lizard、 Stumpy tail lizard | オーストラリア(クイーンズランド州中部および南部、西オーストラリア州南部、沿岸部を除くニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、南オーストラリア州南部) | 色は個体により大きく異なり、暗色や黄褐色、黒褐色の個体が多いです。 体に縞模様や斑点が見られる事もあります。 | |
| Tiliqua adelaidensis | アデレードアオジタトカゲ (ヒメアオジタトカゲ) | Adelaide pygmy blue-tongue skink、 Pygmy blue-tongue skink | オーストラリア(南オーストラリア州のミッドノース) |
保全
開発による生息地の破壊などにより生息数が減少している種もいます。生息国であるオーストラリアは野生動物の輸出を禁止しているため、動物園での展示用や研究用に過去に海外に持ち出された個体からの飼育下繁殖個体が流通しています。その影響もあってか、海外、国内ともに別種もしくは亜種との交雑が頻繁に行われ、個体が純血種であるかの判断は遺伝子検査などを行わない限り不可能に近いです。2022年に7種がワシントン条約付属書IIIとなっています。また、アデレートアオジタトカゲは、一時期絶滅したと考えられていましたが、1992年、研究者が死んだブラウンスネークの胃の内容物から成体のアデレートアオジタトカゲの遺骸を発見し、再発見されました。現在、絶滅危惧種とされ、再発見以来、調査により、5000~7,000頭が生息していると推定され、2024年にアデレードアオジタトカゲが附属書ⅢからⅠへ移行されました。
モルフ
飼育下繁殖プログラムにより、自然界では稀または存在しない多様な遺伝的色彩変異(モルフ)が開発され、流通しています 。代表的なモルフには、アルビノ、ハイパーメラニスティック 、プラチナ 、スノー 、サングロー などがあり、これらは市場で高い価値がつけられています 。
生態
環境
アオジタトカゲは幅広い環境に適応する柔軟性を持ち、生息地は、準砂漠地帯、混合林地、スクラブランド(低木地)から、海岸沿いのヒース地帯、草地まで多岐にわたります 。特に、地表のカバー(地面を覆う植生やマルチング材)が多い開けた場所を好み、都市化された郊外の農場、庭園、芝生など、人間が改変した景観にもうまく適応してします。
行動
- 外敵に襲われると、青い舌を見せ噴気音を出す威嚇行動を取ります
- 昼行性であるため、昼間に活動をします
食性
食性は雑食性で、植物、無脊椎動物、昆虫、カタツムリ、動物の死骸、および小動物などを積極的に探索し、採食します 。カタツムリは彼らの食性において重要な位置を占めています。
寿命
寿命は10~150年と長く、一部の個体ではその予想寿命をさらに10年上回ることも報告されています。
身体
全長
体長は33~43cm程度です。ただし、キタアオジタトカゲなどの大型亜種では、全長50~60cmに達します。
体色
体色は亜種や地理的変異によって大きく異なり、銀灰色、黄色、茶色、または黒を基調とすし、体および尾には通常、不規則な濃淡の横帯(クロスバンド)が見られます。特徴的な模様として、目から耳にかけて暗色の筋状のパターンが現れる個体も存在します。腹側は一般的に白色から淡黄色を帯びています。
雌雄鑑別
アオジタトカゲは一般的に性的二形性が明確でありませんので、身体的特徴のみで雌雄を判別することは難しいです。オスはメスに比べて頭部が幅広く三角形になりやすい、あるいは尾の付け根が太いといった傾向が観察されますが、これらの特徴は個体差が大きいため、確定するものではありません。
性格・習性
警戒して気性が荒い面もありますが、比較的おとなしい性格のため触れあうこともできます。 しかし、おっとりした反面、かむ力が強いため、慣れていない個体には安易に触ったりしないようにしよう。 アオジタトカゲの特徴である青い舌を見せ「フーッ」と音をたてている威嚇行動が見られた時には注意してください。
特徴
身体的特徴として、頑丈で円筒形の体型に加えて、鱗が密に連動しており、非常に滑らかであることが挙げられます。この滑らかな表面構造は、地表での移動(潜行や滑走)を容易にし、同時に土や破片の侵入を防ぐことに役立っています。
広く扁平な頭部
頭部は比較的大きく、広く扁平で、首との境界が不明瞭です。この頭部の形状は、硬い獲物や植物質など、多様な食餌を処理するのに適した強力な咬筋を収容するのに役立ち、雑食性の彼らの食性に対応しています。また扁平な頭部は、捕食者から身を隠すために狭い隙間や地面の窪みに潜り込むのを助け、防御行動を支援します。頭蓋骨内の構造は、強膜輪の発達した大きな目を支え、視覚的な探査能力に寄与します。また、鼓膜が露出しており、聴覚にも優れています。

頑丈で円筒形の体躯と短い四肢
頑丈で円筒形の胴体と、胴体に対して短い四肢を持ちます。短い四肢は、樹上生活よりも地上での移動(這うような動きや直線的な歩行)に適しています。彼らは主に地表や低層植生で生活し、比較的ゆっくりとした動きをします。頑丈な体型は、熱容量を大きくし、環境温度の変動に対する体温の安定性を高める(恒温性を補助する)のに役立ちます。これは、変温動物である彼らにとって重要な特徴です。胴体は内臓と、エネルギー源として脂肪を蓄積するのに十分なスペースを提供します。特に冬眠前や繁殖期には、この脂肪貯蔵が重要となります。
密に重なり合った滑らかな鱗
皮膚は密に重なり合った、大きく滑らかな鱗で覆われています。鱗は乾燥した環境での水分蒸発を防ぐバリアとして機能し、脱水から体を保護します。また、物理的な損傷(擦り傷など)や微生物の侵入から体を守ります。また鱗が滑らかであることは、土や砂の中を容易に滑るように移動することを可能にし、捕食者からの迅速な隠蔽を助けます。
青色の舌
本属の最も注目すべき特徴は、属名が示す通り、大きく肉厚な青い舌です。この青舌は、潜在的な捕食者に対する威嚇表示として大きく曝露される防御行動に用いられます 。また、舌は変形可能であり、粘液を生成することで獲物を捕獲する際にも利用されます。
胎生
アオジタトカゲは卵胎生のトカゲで、メスは卵を体内で孵化させ、発育した仔を直接産出します。
