ウサギは、体調不良を隠す習性があり、これは野生下では捕食される立場であるための生存戦略とされています。しかし、飼育下では病気の発見を遅らせる原因となってしまいます。そのため、見た目が元気でも「実は病気が進行していた」というケースも少なくありません。さらに、ウサギの体は代謝が早く、状態の悪化があっという間に進むことがあります。健康診断はこうした見えない不調を早期発見・早期治療するための大切な機会です。
検査の種類
ウサギの健康診断では、その子の性格・ストレスの感じやすさ・体調を考慮しながら、必要な検査を選択します。「できるだけ負担を少なく、でも必要な情報はしっかり得る」ことが重要です。
身体検査
身体検査は得られる重要な情報が多く、基礎となる検査です。全身を観察しながら触り、体格から栄養状態、皮膚・被毛・爪、目や耳の状態、心雑音がないかなどを幅広くチェックします。

定期的に体重測定を行う事はとても重要です、急激な体重減少などないかを確認します。痩せている・体重減少がみられると、慢性の歯疾患・腎臓病や慢性的な痛みや腫瘍が隠れていることがあります。逆に太りすぎていると、普段の食事の栄養バランスが悪く食事内容を見直す必要があります。
皮膚や被毛の状態からは外部寄生虫や皮膚疾患、栄養状態、ストレスの影響が読み取れます。ウサギは足裏のトラブルも多く気づきにくい部分ですので、定期的なチェックが必要です。目や鼻、耳の異常は、涙目や鼻炎、外耳炎、ミミダニなどの感染症や歯牙疾患と関連していることが多くよく観察が必要です。
聴診では心臓と呼吸音を確認します。特に心臓の異常は症状がなくともたまたま心雑音が発見されることがあり、お家での確認も難しい部分です。お腹の触診では胃腸のガスの溜まり具合や痛みの有無、しこりなどがないかを確認します。
ウサギは生涯歯が伸び続ける動物のため、歯のトラブルは病気の大きな原因になります。口腔内検査で切歯・臼歯の咬み合わせ、口腔粘膜の炎症が無いかを確認します。トゲ状の歯が形成されてしまい、粘膜に傷をつけていないかをよく観察します。歯牙疾患は食欲不振や胃腸不良につながるため、非常な重要な検査です。後述になりますが、画像検査と組み合わせて評価もします。

血液検査
病院での採血が必要になりますが、外から見えない内臓の状態を知るうえでとても役立つ検査です。赤血球・白血球(貧血の有無、炎症/感染症)、肝臓・腎臓の状態、電解質バランスを確認します。特に高齢のウサギでは血液データの変化が初期発見の手がかりになるケースがあるので重要です。血液検査は大きく「CBC(血球計算)」と「血液化学検査」の2つに分けれます。

CBC(血球計算)
CBCは血液中の細胞の数を評価する検査です。主に赤血球・白血球・血小板の3つを詳細に調べます。赤血球の数が少ない=貧血状態であると慢性的な炎症、栄養不良、腎臓病、骨髄疾患などが疑われます。ウサギは貧血が目立ちにくく、軽度な変化でも重要なサインとなるためしっかり確認が必要です。白血球は体の免疫や炎症反応を表す細胞です。細菌感染や激しい体の炎症、まれに血液のガンが見つかることもあります。
血液化学検査
臓器の働きや代謝の状態を評価する検査で非常に多くの情報が得られます。肝臓の状態はAST/ALT/ALPによって確認します。脂肪肝や肝臓障害、肝臓がん、胆管疾患の疑いが無いかを確認します。肝臓の異常は隠れやすいことが多く、知らないうちに肝臓に大きな腫瘍ができていた、なんてことも少なくありません。腎臓の状態はBUN/CRE(クレアチニン)によって判断します。腎不全も同様に静かに進行することが多く、明確な症状が出るころにはとっくに進行していることがほとんどであり早期検出が重要です。特に高齢ウサギや持病のある子では、定期的なチェックが健康寿命に直結します。
糞便検査
体に触れずに行える点で、ウサギへのストレスがとても少ない検査です。まず寄生虫の有無を確認します。とくに若齢ウサギで多いコクシジウムなどの検出が可能で、これは栄養不良や軟便の原因になってしまいます。さらに糞の中に未消化の繊維が多い場合は胃腸の動きが停滞している可能性もあり、生活環境や食事の見直しの指標になります。
尿検査
糞便検査と同様に体に触れずに行える点でうさぎへのストレスが少ないです。腎臓機能の状態や尿石症の兆候や膀胱炎が無いかを確認します。尿の濃さを確認して腎臓がうまく尿を濃縮できているかを確かめます。またタンパク尿が出ていないかなどを確認し、腎臓病の可能性が無いかをチェックします。また細菌や赤血球・白血球が出現していないかにより尿路感染の有無も確認できます。
画像検査(レントゲン検査・エコー検査・CT検査)
レントゲン検査
体にⅩ線を当てて骨・歯・臓器を影の画像として映し出します。短時間で撮影でき、ウサギの診断で広く使われています。ウサギでは歯牙疾患・胃腸疾患・尿石症が多いため、重要な役割を持っています。頭部のレントゲンでは歯の状態を大まかに確認することができます。臼歯の高さや均一性、歯根の過長がないかをチェックします。胸部のレントゲンでは、心臓や肺の状態を把握できます。例えば、心臓の拡大がないか、肺腫瘍が隠れていないかをチェックします。また、偶発的に胸腺腫という大きな腫瘍が見つかることも少なくありません。症状が出ていないことも多いです。腹部のレントゲンでは胃腸の状態、膀胱結石/尿道結石の有無、肝臓や脾臓の腫大、他の腹腔内腫瘤、女の子の場合は子宮の腫大が無いか等をチェックします。初期の腫瘍や結石は症状が出ないことの方が多いです、早期発見が重要です。

エコー検査
体の表面から超音波を当てて、内臓の状態をリアルタイムで観察する検査です。特に未避妊雌のウサギでは卵巣子宮疾患の評価で重要になり、子宮腺癌や子宮水腫、子宮蓄膿症を早期に発見する助けになります。他にも肝臓や腎臓、膀胱といった内部構造の評価ができます。結節や腫瘤の有無、組織の変性状態などを推測でき、これはレントゲンよりもエコー検査の方がわかりやすいです。膀胱は沈殿物や壁の厚み、感染や結石の判断材料になります。

CT検査
体の内部を輪切り状に撮影し、コンピューター処理で立体画像として表示する検査です。レントゲン・エコーでは見えにくい部分まで可視化できます。上記2つの検査(レントゲン・エコー)は保定(ウサギが動かないように抑えておく)必要があり、多少なりとストレスがかかってしまいます。動物のCT検査は麻酔下というイメージが多いですが、動物病院によっては無麻酔下で評価してくれる所もあります。※麻酔下と比べると精度は落ちます。ウサギはじっとしてくれることが多いので、専用のもしくは持参したケージそのままでパッと撮影可能です。レントゲン検査で記載したものをより細かく観察が可能になります。特にレントゲンではまだわからないレベルの肺腫瘍や、歯の根尖部とその周囲組織や骨の変性の詳細な確認も可能です。胸部や腹部の詳細評価だけではなく、レントゲンやエコーでは評価が難しい鼻腔内や中耳も同時に評価できることもメリットです。



頻度や注意点
若くて健康な成体であれば年に1回、5歳以上の高齢ウサギであれば半年に1回程度が目安になるでしょう。基本的に人間の様な絶食は不要です。便や尿の様子が気になるのであれば新鮮な物を持参するとベストです。ウサギ含むエキゾチックアニマルを診療できる動物病院は限られます、前もって来院相談のお電話はしておきましょう。また、ウサギは環境変化に敏感です。キャリー内の中には普段使っているタオルや滑り止め、チモシーをひき、少しでも安心できるようにしてください。冬は保温、夏は暑さ対策も忘れずにしましょう。
まとめ
健康診断はその日の健康状態を知るだけではなく、“過去のデータと比較し、変化をいち早く知る”ことが最大のメリットです。過去のデータがあれば、この時点までは○○には異常が無かった、もしくは健常時でも○○の数値や画像所見はこの子ではこの程度であった、などの判断材料になります。データの蓄積です。定期的な健康診断により、そういった数値や画像所見の変化にも正しく対応することができます。繰り返しになりますが、ウサギはとても繊細で体の不調を隠してしまいます。健康診断は症状が重篤化する前に気が付くための最大のチャンスです。少しでも気になることがあれば早めに動物病院に相談、定期的な健康診断を心がけましょう。
