◎フトアゴヒゲトカゲってどんなトカゲ(知らないといけない生態と特徴) 

流通

フトアゴヒゲトカゲの捕獲はオーストラリアの法律によって厳しく管理されており、日本で販売されているフトアゴヒゲトカゲはすべて繁殖個体であり、輸入にも厳格な許可が必要です。しかしながら、愛好家や専門家による品種改良により、現在では多くのモルフが存在します。

ペット向きトカゲ

フトアゴヒゲトカゲは恐竜のような外観をしており、アゴヒゲがあり、学名のPognaはギリシャ語でヒゲという意味です。外貌とは反対に、ひょうきんともいえる行動をとり、温和な性格をしています。大きさも手頃で、手で抱きあげられることも嫌がらず、ペット向きのトカゲといえます。

分類・生態

分類

有鱗目アガマ科アゴヒゲトカゲ属
学名Pogona vitticeps
英名:Bearded dragon,Central bearded dragon

分布

オーストラリア東部から南東部

生態

環境:乾燥気味の森林、低木地、砂漠地帯
行動
・昼行性で、夜は岩や草木の間などで寝て昼に活動し、木の枝や岩の上で日光浴して体を温めることを好みます。

・緩い群れを作りますが、単独行動のような生活をしています。日光浴や採食する場所に複数の個体が集まり、オス同士は縄張り争いを行うこともあります。

・生息地の最も寒い5~9月に、倒れた丸太や木の切り株の間で冬眠をします〔Well 1971〕。

食性:雑食性で主食は昆虫ですが、植物の葉なども食べています。
寿命:6~10年

身体

全長:45~56cm
体重:280~510g

性格・習性

マイペース

性格は温和で、何をされても動じない面もあります。仕草や表情、行動が可愛いです。近寄っても逃げたり隠れたりもせず、攻撃的にかみつくようなこともないです。触っても多くは動じず、人に馴れてくると手の上に乗せて、ピンセットや手ら餌を食べてくれるようになったり、抱っこやリードを付けて散歩にもいけるほどです。人に馴れると言われていますが、馴れると言うよりは人に動じないと言うのが正しいです。顔の表情は変えず、目線が合うように首をとかしげながら見上げるような仕草をします。

餌への執着心

餌となる生き餌のコオロギを見つけると、素早く追いかけ短い舌を伸ばして餌をくっつけて、次々に口へ運ぶ動作も可愛いです。

ボビング・アームウェービング

ボビングとアームウェービングという特有の行動をします。頭を縦に振るボビングは、特に発情したオスの求愛行動として考えられています。アームウェービングは幼体で見られることが多く、片腕をあげて宙に円を描くように、ゆっくりと後ろから前に大きく回します。続けて反対の腕を回すこともあり、これを数回繰り返します。この行動は相手の優位性を認める時に見られるともいわれ、小型の個体が大型の個体に対して、またオスよりもメスがします〔Zoffer 1997〕。メスのオスに対する発情行動ともいわれていますが、必ずしもするとはかぎりません。アームウェービングとボビングが必ずしも発情行動とは限りません。幼体でも威嚇などですることもあります。

ボビングとアームウェービングの詳しい解説はコチラ

特徴

平らな体

体幹ががっちりとし、扁平になっています。名前のフトは体の太さが由来になっています。さらに、肺に最大限に空気を吸い込むことで、喉捕食者にはより大きく見えるようにすることができます。

フトアゴヒゲトカゲ
フトアゴヒゲトカゲのCT

平たい姿勢

普段から地面に体をつけた姿勢をとっています。そして、外敵に追い詰められたり脅かされたりすると、さらに体を地面に平らに押し付け、胸郭を外側に広げ、口を開けてヒゲを広げます。しかし、強力な脚を持ち、移動時に体を完全に地面から浮かせることができます。これは、熱い地面からの熱吸収を抑え、体下の空気の流れを良くするためです。

三角頭

頭部は大きく三角形をしています。成体のオスはメスよりも角ばって大きく、強く噛むことができます〔Jones, Marc et al.2020〕。

太い尾

尾は太く、頭胴長よりも長いです。

トゲトゲ

体全体に刺状の鱗があり、見た目はゴツゴツしています。特に名前の由来にもなっているアゴヒゲヒゲは、首の両側から顎にかけて刺状の鱗が伸びており、威嚇時などには膨らませて存在感を示します。

フトアゴヒゲトカゲのとげ
フトアゴヒゲトカゲ"

ストレスマーク

興奮したりストレスがかかった時、またはオスは発情すると喉下が黒色に変化します。これをストレスマークと呼ばれて、オスに顕著に起こり、メスはわずかに灰色になるだけです。

フトアゴヒゲトカゲのストレスマークの詳しい解説はコチラ

黒い爪

趾の数は四肢ともに5本です。基本的には爪は黒色をしています。

第三の目

頭頂部の真ん中に小さい第3の目があります(小さ過ぎて確認できない個体もいます)。小型で透明な嚢状構造の円形の構造物が存在し、頭頂眼(Pariental eye)と呼ばれています。頭頂眼を収容している孔を頭頂孔と呼びます。実際は物を見ることはできないですが、第3の目とも呼ばれる光を感受する場所で、明暗を感じたり、方向を感覚的にとらえています。頭頂眼と脳の一部が神経でつながっており、頭頂眼が光を感知して性ホルモンの産生を行う役目もあります。その他にも体温調節、ビタミンD産生を担っているという報告もあります〔疋田 2002〕。580nm未満の波長の光が頭頂眼に入ると、光依存性磁気受容が生じることが明らかになりました〔Levitt et al.2022,Nishimura 2020〕。]

トカゲの頭頂眼の詳しい解説はコチラ

脱皮

フトアゴヒゲトカゲは、脱皮の前に体が白くなり、各部位が所々にポロポロと脱皮します(部位脱皮)。

ポイントはコレ

・フトアゴは可愛くてひょうきんな中型のトカゲ
・オーストラリアの乾燥地帯に生息
・昼行性
・雑食性で主食は昆虫、成長とともに植物を食べる
・ボビングとアームウェービングという特有の行動
・三角形の頭で、体は扁平
・体表に多数の棘

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参考文献

  • Grenard S.An Owner’s Guide to a Happy Healthy Pet:The Bearded Dragon.Howell Book House.New York.1999
  • Johnson JD,Bearded Dragons.Exotic DVM8(5).Zoological Education Network:p38-44.2006
  • McKeown S.General husbandry and management. In Reptile medicine and surgery. Mader DR ed.WB Saunders.Philadelphia:p9-19.1996
  • Jones, Marc E. H.; Pistevos, Jennifer C. A.; Cooper, Natalie; Lappin, A. Kristopher; Georges, Arthur; Hutchinson, Mark N.; Holleley, Clare E. Reproductive phenotype predicts adult bite-force performance in sex reversed dragons (Pogona vitticeps). Journal of Experimental Zoology A333 (4):252‒263.2020
  • Levitt B,Lai H,Manville Albert.Effects of non-ionizing electromagnetic fields on flora and fauna, Part 2 impacts: how species interact with natural and man-made EMF”. Reviews on Environmental Health37(3).DeGruyter:327–406.2022
  • Nishimura T.The Parietal Eye of Lizards (Pogona vitticeps) Needs Light at a Wavelength Lower than 580 nm to Activate Light-Dependent Magnetoreception.Animals10 (3).MDPI:489.2020
  • Quinn AE,Georges A,Sarre SD,Guario F,Ezar T,Graves JA.Temperature sex reversal implies sex gene dosage in a reptile.Science316:411.2007
  • Tosney K.”Caring for an Australian Bearded Dragon” (On-line). Accessed November 16.1999 http://www.ualberta.ca/~rswan/ERAAS/bd.htm.1996
  • Wells RW.Hibernation–bearded dragons.Herpetofauna3:4-6.1971
  • Zoffer D,MazorligT.The Guide to Owning a Bearded Dragon.TFH Publications.Neptune City.NJ.1997

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。