爬虫類中で最も多いモルフ数
流通しているヒョウモントカゲモドキの個体のほとんどがCB個体で、何千種のモルフが流通し、爬虫類の中でも品種改良が最も進んでい一つです。モルフ名はブリーダーの名前をつけることもあり、アメリカではトレンパー(Ron Tremper)氏(例:トレンパー・アルビノ、トレンパー・ジャイアント)やベル (Mark Bell) 氏(例:ベル・アルビノ)、ジョン・マック氏(例:マック・スノー)、マーフィー(Pat Murpfy)氏 (例:マーフィー・パターンレス)、スティーブ・サイクス氏(例:サイクスエメリン)、レインウオーター(Tim Rainwater)氏(例:レインウオーター・アルビノ)、イギリスではレイ・ハイン(Ray Hine)氏(例:ハイポタンジェリン、キャロットテール)などが有名で、さらに彼らの居住地であるテキサス、フロリダ、ラスベガスが名前の一部につくこともあります。しかし、色は成長過程において変化することがあり、幼体と成体で異なる色合いになることも珍しくありません。
野生色
ヒョウモントカゲモドキでは5亜種をノーマルと呼びますが、ハイイエローというモルフがノーマルと呼ばれることがあるため、ブリーダーによっては、野生個体同士の交配から生まれた個体をピュアブラッドやワイルドストレインという名称で区別しています。原産国が政情不安定などの理由により、WC個体の流通は極端に少ないです。
ヒョウモントカゲモドキってどんなトカゲ(知らないといけない生態と知識)
ノーマル
野生種に近い色と模様をしており、薄い黄褐色に黒色のヒョウ柄の模様が入ってます。ノーマルと表記されていても、殆どがハイイエローのモルフと思われます。

体や目の色と模様によるモルフ
体色や模様によるモルフはノーマル以外に、黄色の強い個体を選択交配した系統のタンジェリン系(ハイイエロー、タンジェリン、キャロットテールなど)、黒色色素欠乏で赤目のアルビノ系(アルビノ、アプター、ラプター、レーダーなど)、模様を欠く黄色やクリーム色のパターンレス系(パターンレスレーダー、マーフィーパターンレス(リューシスティック)、ブリザードなど)、ハイイエローの黄色が白色を帯びているモノトーンのスノー系(スノー、マックスノー、スーパーマックスノー、アーバンスノーなど)がみられ、模様が特徴的な、ストライプ、ジャングル、エニグマなどがいます。
タンジェリン系
ハイイエロー(High yellow)
ハイイエローは1972年頃に出現し、野生個体から黄色味が強い、あるいは黄色が多い個体を交配して作成されました。多くのモルフの基礎となっており、ノーマル(Normal)として販売されている個体の大半ハイイエローで、昔はゴールデン、ハイパーザンティック、スーパーハイイエローなどと呼ばれていました。黄色の領域や濃さ、斑紋が多様化しており、異なるモルフと思うくらいです。

タンジェリン(Tangerin)
タンジェリンとは鮮やかなオレンジ色をした柑橘類の色をしたモルフで、ハイイエローの中から、尾基部や腰の周辺で特にオレンジ色が強い個体を選別交配して、1996年に作出されました。しかし、幼体にはタンジェリンの特徴がみられないため、成長してどのくらいのオレンジ色が発色するのかは分かりません。
ハイポタンジェリン(Hypoangerin)
ハイポはハイポメラニステック(Hypomelanistic)の略で、黒色色素が減退しおり、ノーマルと比べても黒色も薄くなり、オレンジ色と綺麗な組み合わせになります。ハイポタンジェリン正式名称はハイポメラニスティックタンジェリンで、通称ハイタンと呼ばれます。体表に黒色の斑紋が少なく、全身にオレンジ色が広がり、黒斑が少ないほどよいとされ、特に胴体部分の黒斑模様がほとんどないものはスーパーハイポタンジェリン(Super Hypo Tangerin:SHT)と呼ばれています。ハイポタンジェリンのオレンジ色は、近親交配による選別交配を経て色味が強くなり、別系統同士の交配ではオレンジ色が薄くなります。このため、ブリーダーごとに系統が立てられてブランド化されており、ニーヴィスタンジェリン、ブラッド、ブラッドハイポ、エレクトリック、サンバーン、ホットエース、アトミック、タンジェリントルネードなど多数のブランドが存在します。系統化されている個体はそれらのブランド名で流通しています。


エメリン(Emerin)
エメリンは、エメラルドとハイポタンジェリンを交配して作成され、タンジェリンの特徴でもあるオレンジがエメラルド(背中に緑色の模様が入る特徴があり、宝石のエメラルドに因んで命名されましたが、実際は僅かな緑色の発色です)よりも強いのが特徴です。エメリンはエメラルドタンジェリンの略で、トレンパー氏が作った造語です。サイクスエメリン(Sykes Emerin)はスティーブ・サイクス(Steve Sykes)氏が作出したモルフで、緑色が明瞭に見えるため人気があります。
パターンレス系
通常、レオパのヒョウモントカゲモドキにはその特徴である黒い豹紋が存在します
マーフィーパターンレス(Murphy’s patternless)
1991年にパット・マーフィー氏が豹紋がほとんどないモルフを作成し(幼体時には少し見られますが、成長とともに消失します) 、マーフィーパターンレス“ と呼ばれています。日本ではリューシスティックとも呼ばれています。リューシスティックとは白化という意味ですが、マフィーパターンレスの地色は真っ白ではなく、薄い黄色が残っています

ブリザード(Blizzard)
1995年に出現した白い体色のモルフで、発見当初はマーフィーパターンレスの表現違いと判断され、マーフィーパターンレスとの交配が行われた。このため、初期のブリザードは黄色い体色になる個体が多く、そのような個体はバナナブリザードと呼び分けられた。ブリザードはマーフィーパターンレスとは異なり、孵化直後から豹紋はまったくありません。また地色もマーフィーパターンレスよりもよりはっきりとした白色ですが、成長するとピンク、黄色、深い紫色を帯びてきます。黄色を帯びたブリザードはバナナブリザード、ベージュを帯びたり、灰色を帯びたブリザードはミッドナイトブリザードと呼ばれることがあります。

アルビノ系モルフ
皮膚から黒色色素が抜けて現れないものをアメラニステック(Amelanistic)と呼ばれ、先天性に黒色色素が欠乏しているのをアルビノ(Albino)と呼びます。アルビノは白子と思われがちですが、爬虫類では黒色色素が抜けてしまっても白くなることはなく、もともとその個体がもつ他の赤や黄色の色素が残ります。アルビノのヒョウモントカゲモドキは黒い豹紋がピンクや白色になり、また体表は黄色からオレンジ色になります。黒色色素が抜けた目は赤目になります。ヒョウモントカゲモドキの代表的なアルビノは作成者の名前をとって名前がつけられ、代表的なものはトレンパー氏が1996年作成したトレンパーアルビノですが、他にもベル氏が1999年に作成したベルアルビノ、レインウオーター氏が1998年作成したレインウォーターアルビノ等が存在しており、少しそれぞれ外観が異なります。トレンパーアルビノはテキサスアルビノとも呼ばれ、地色部分が黄色く、豹紋はラベンダー色、白色、ピンク色等様々な色合いです。ベルアルビノはフロリダアルビノとも呼ばれ、全体的にクリーム色の発色が強く、豹紋部分は茶色で、メリハリが強いです。また、目も他のアルビノに比べて赤色が強くでています。レインウォーターアルビノはラスベガスアルビノとも呼ばれ、他の2種に比べて、体色が薄く豹紋も含めて、明るくて薄いです。トレンパー、ベル、レインウォーターの3系統は互換性がないため、異なる系統のアルビノ同士で交配した子供はすべてノーマルになります。
タンジェリンアルビノ
アルビノとタンジェリンを掛け合わせたものです。3種類存在するどのアルビノとの掛け合わせでも作ることができますが、アルビノの種類により黒色色素の出方が異なるため、微妙に地色および豹紋の色合いが異なってきます。ベルアルビノとタンジェリンを掛け合わせた場合、非常に美しい濃いオレンジ色が地色に表れてきます。またタンジェリンにも幾つかの血統があり、トレンパー氏が作成したタンジェリンにトレンパーアルビノを掛け合わせたものはタンジェロと呼ばれ、地色に赤色が含まれてきます。
ラプター(Raptor)
ラプター(RAPTOR)は、アプター(APTOR)の赤目(レッドアイ:Red eye)の個体を指す造語です。APTORとははアルビノ(A)、パターンレス(P)、ブリーダーのトレンパー氏の作出(T)、オレンジ(ORの英語の頭文字から命名され、2004年にトレンパーが作出しました。

アプター(Aptor)
APTORとはアルビノ(A)、パターンレス(P)、ブリーダーのトレンパー氏の作出(T)、オレンジ(OR)の英語の頭文字から命名されたモルフで、ラプターの後に作出されました。
レーダー(Radar)
ラプターを作りあげるためのアルビノをトレンパー氏のアルビノ(トレンパー・アルビノ)ではなくてベル氏のアルビノ(ベル・アルビノ)を用いたモルフです。

スノー系モルフ
体色から黄色が抑えられ、白黒のモノトーン調になったモルフで、地色が白であるために雪という意味から命名されました。スノーにも幾つかの系統があり、ブリーダーの名前から タグスノー(The Urban Gecko社の頭文字 TUG)、ジェムスノー (Reptillian Gem社) と呼ばれています。これらスノーは、豹紋はきっちりと見られ、地色が幼体時ほど真っ白で、成体になると少しクリームがかった色になります。これらのスノーは血統交配により表現系を強めていったため、ラインブレッドスノーとも呼ばれています。
ダオライトスノー(Diorite snow)
ダイオライトの本来の意味は閃緑岩と呼ばれる鉱物で、この鉱物の見た目を連想してダイオライトと命名されました。ダイオライトを作出し最初に発表したのは日本人の安川雄一郎氏です。黒班のスポットが胡椒の様に細かく、全身に散り、同時にマックスノーを表現します。

マックスノー(Mack snow)
ラインブレッドスノーとは別の品種として、マック氏が作成したスノーのモルフで、地色が白くなっています。体色の黄色味の発現が抑えられており、幼体時は特にモノトーン調の体色をしています。
スーパーマックスノー(Super mack snow)
スノーマックスノー同士を掛け合わせて、2004年に作成されたモルフで、地色の黄色がほぼ消失して体色がほぼ白と黒のモノトーン調になり、背中の模様は途切れたストライプが一列に規則的に並びます。マックスノーの目は一般的な品種に見られるノーマルアイですが、スーパーマックスノーの目は瞳全体が黒一色になります。目が真っ黒になる表現はエクリプスと同様ですが、遺伝子的には別物になりますこのモルフの登場が、日本国内におけるヒョウモントカゲモドキの人気を上昇させました。

その他モルフ
エニグマ(Enigma)
エニグマとは英語で、謎という意味で、典型的な形質がない位に多様化しており、色彩や模様の個体差が激しいです。模様の斑紋の数や大きさは年齢とともに変化することもあります。一般的に全身の斑紋は非常に細かく、不規則に出現しますが、幼体は特有のバンド模様を欠いています。目はノーマルアイだけでなく、マーブルアイや赤い虹彩を持つ個体も多く見られます。そして、最大のエニグマの特徴は、斜頸や旋回などの神経症状が見られる先天的素因を持っています(エニグマ症候群)。
エニグマ症候群(Enigma syndrome)
ヒョウモントカゲモドキは膨大の数のモルフが繁殖されています。繁殖は近親交配の割合も高く、ヒョウモントカゲモドキのエニグマ症候群 (ES) や虹彩腫などの遺伝性疾患の発生が懸念されています。モルフであるエニグマは 2006 年に作成されましたが、一部の個体に神経疾患が多発し、モルフ特異的な遺伝性疾患の潜在が指摘され、エニグマ症候群と呼ばれています。症状は、斜頸や旋回、発作、上を見上げたり、獲物を捕まえられないなどの異常行動です。しかし、症状の発現や経過、重症度などに個人差があるのが特徴のようです。慢性的になると自力で採食もできなくなります。症候群は純粋なエニグマだけでなく、エニグマ遺伝子が関与する他の個体にも発症することがありますので、つまりエニグマ遺伝子を潜在的に備えている個体が、ヒョウモントカゲモドキ全体に蔓延する恐れもあります。スイスでは、2015年から繁殖が禁止されていますが、他のすべての国では依然として可能です。また、ホワイト&イエロー(WY)のモルフにも同じく神経疾患が見られ、バランス感覚と協調運動能力に問題が生じ、獲物を捕らえる動作が困難になります。エニグマ症候群と同じく遺伝性疾患ですが、症状は発作などは見られず、やや軽度とされています。
ジャングル(Jungle)
背中の尾と体の模様の両方が乱れているのがジャングルあるいはアベラント(Aberrant)と呼ばれてます。

これ以外にもレオパの豹紋の変異として、豹紋が繋がってストライプのように見えるストライプ、ストライプがさらに太くなったボールドストライプ、と呼ばれるモルフなど様々なモルフが作り出されており、今後さらに増えていくと予想されます。尾に濃いオレンジ色が乗った個体は、ニンジンに見えることからキャロットテール(Carrot Tail)と名付けられています。キャロットテールの定義は明確ではないが、概ね尾の表面積の15パーセント以上が濃いオレンジ色であれば、キャロットテールになります。アルビノでありながら明瞭な黒色の模様を持つ個体や、通常では見られない発色をする個体はパラドックスと呼ばれています。
目のモルフ
銀灰色の虹彩に縦に細長い黒色の瞳孔を持つノーマルアイ、虹彩まで黒色のエクリプス(実際は同じ色の虹彩と瞳孔がそれぞれ確認できます)、虹彩の中に瞳孔が滲み出したような模様のマーブルアイ、エクリプスから派生したアビシニアンがあります。色素を欠いたアルビノもあり、光彩の色が白色をしていま。アビシニアンは虹彩の網目模様が赤く、血走った目をしているようにみえます。エクリプスのうち、完全な黒目をソリッドアイ(フルアイ)、黒に近い赤目をレッドアイ、透き通るような赤目をルビーアイ、横半分が黒目となるのをスネークアイ(ハーフアイ)と呼ばれます。

エクリプスの弱視
目が全面が黒色になっている品種で、ウル目とも呼ばれ、その愛らしさから人気が高い品種です。また、同じく黒目になるスーパマックスノーもここに分類されます。黒色素が多すぎるが故、通常のライトでも周りが見にくく、弱視のような状態の子が多いです。エクリプス・スーパーマックスノーは症状の重さに違いはあってもほとんどは弱視だと言われています。弱視の子は餌を捕食するのが苦手ですので、捕食しやすいようにピンセット等で目の前に出して捕食しやすくすると言った工夫などが必要でしょう。人の手であっても捕食するために噛みつこうとする場合もあるため、お迎えする際は注意した方が良いでしょう。
身体の大きさによるモルフ
トレンパージャイアント
身体が大きいモルフはロン・トレンパー氏によって作成され、単純に、ジャイアント、スーパージャイアントとも呼ばれています。オスで全長28cm、体重は150gを超えます。成長度も早く、一般的なヒョウモントカゲモドキの繁殖可能サイズが50グラムであるところを、このモルフは生後1年未満で100g前後に成長します。トレンパージャイアント同士を交配してスーパージャイアントも作成され、大きなものは180gを超えます。トレンパー氏がアルビノ系を得意としているため、このモルフはアルビノの流通が多いく、ジャイアントトレンパーアルビノと呼ばれています。